日常の謎に迫る、加納朋子氏のおすすめ作品を10選ご紹介させていただきます。
短大卒業後、化学メーカーに勤務し、1992年「ななつのこ」という作品で、第3回鮎川哲也賞を受賞し、作家デビューを果たします。
1995年には「ガラスの麒麟」という作品で第48回日本推理作家協会賞の受賞を機にそれまでの会社勤めを辞めて、専業作家の道を歩んでいきます。
この記事の目次
加納朋子おすすめ作品10選をご紹介~独自の世界観を描写する~
ジャンル的には推理小説ですが、血生臭い殺人事件の描写はあまりなく、日常の謎を解明する、ストーリー展開が特徴的です。
連作短編集を多く執筆しているのですが、仕掛け自体は本格ミステリーの流れを汲んでいるようです。
尚、夫は同じ推理作家の貫井徳郎氏であります。
そんな加納朋子氏のおすすめの作品を10選ご紹介させていただきますので、お楽しみください。
《ななつのこ》
駒子シリーズの第一弾であり、作中作品の「ななつのこ」の読者と作者の間に交わされる、手紙のやり取りで謎解きをする連作長編です。
ミステリーであるはずなのに、事件らしい事件は全く起こらず、日常のちょっとした謎解きという流れでストーリーは展開していきます。
言葉一つひとつに、温かみがあり、ミステリーが苦手な人でも大いに楽しめます。
爽やかな読後感を味わえる作品です。
《魔法飛行》
駒子シリーズの第二弾であり、前作の小説家のススメで私(駒子)が小説執筆にチャレンジする連作長編です。
優しく温かな日常に現れる、少し不思議な謎が描かれていて、読み進めていくうちに、その謎に隠された、意味が明かされます。
人間関係も含め、伏線が見事に張り巡らされていて、確かに魔法のように感じてしまいます。
不思議に感じる日常ミステリー作品です。
《掌の中の小鳥》
お洒落なエッグ・スタンドという名のカクテルバーを舞台に、カップルの恋の進行を織り交ぜた、5編からなる連作短編集です。
青春のほろ苦さ、若い男女の恋愛過程におけるスリリングなところが、日常の謎と見事に溶け合っています。
ともあれ、優しい文体の中に、人間の心に潜む闇も織り込まれていてドラマチックな展開も伺えます。
クオリティの高さを感じる作品です。
《いちばん初めにあった海》
二人の女性が、自分の人生を取り戻すまでの切ない話を描いた、連作中編2話です。
それぞれ心に傷を負い、自分の欠けた身体の、もう半分を探す旅が綴られています。
避けられなかった不幸で傷ついてしまった人が、同じような心に傷を負った人に出会うことで、新しい展開が見えてきます。
心が洗われるような作品です。
《ガラスの麒麟》
美しくて、聡明な女子高生が通り魔に殺されたことから始まる、6編からなる連作短編集です。
章ごとに語り手が変わり、被害者の女子高生の人物像と、事件の真相が少しずつ明らかになっていきます。
散りばめられた、伏線が終盤で回収される展開には恐れ入ってしまいます。
少し切なくなる作品です。
《月曜日の水玉模様》
通勤電車で知り合った男女二人が、身近に起こる不思議な事件を解明していく、7編からなる連作短編集です。
さらっと読めますが、内容がしっかりと構成されているので、謎解きの瞬間が最高に面白くなっています。
一昔前の作品ですので、少し時代を感じてしまいますが、登場人物がとても魅力的なので楽しめます。
日常の中にある、非日常を感じてしまう作品です。
《沙羅は和子の名を呼ぶ》
ホラー要素があったり、SFチックなものやパラレルワールドが漂うものも含んだ10編からなる短編集です。
いつものように、根底にある、温かくて優しい描写は健在であり、瑞々しい感性で綴られています。
現実的なミステリーでありながら、予測のつかない展開で大変楽しむことができます。
少し不思議で優しい作品です。
《螺旋階段のアリス》
アリスシリーズ第一弾で、サラリーマンから探偵へと転身した男(仁木)の元へ探偵助手志願の美少女(安梨沙)と織りなす7編からなる短編集です。
依頼人やストーリーがところどころ、「不思議の国のアリス」や「鏡の国のアリス」に例えられています。
事件の解決の先に、登場人物の心理が描かれ、非常に味わい深くなっています。
じんわり沁みてくる作品です。
《ささらさや》
夫を交通事故で亡くした妻が、乳飲み子の赤ん坊と共に、新生活を始めていく話です。
妻がいろいろな困難に陥るたびに、死んだはずの夫が、他人の姿を借りて助けに来てくれます。
設定としては、突拍子もない話ですが、加納氏の柔らかな筆致がそれを自然なものとしているので違和感はありません。
切なくも愛しい日々を描いている作品です。
《虹の家のアリス》
アリスシリーズ第二弾で、軌道に乗ってきた探偵事務所に、持ち込まれる奇妙な事件を描いた6編からなる連作短編集です。
今作は家族の在り方に重点を置いていて、事件の背後にあるのは、家族への思いやりであったり、家族の歪みなのです。
事件の経緯を通じて、他人が求める姿ではなく、安梨沙自身が本当の自分を出し始めた成長物語としても捉えられます。
続きが気になる作品です。
まとめ
加納朋子氏の作品はいかがでしたでしょうか。
歯切れのいい、優しさに溢れる文体に満足していただけたでしょうか。
まだ、読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
温かい気持ちに浸れると思います。