元ソフトウェア開発者である、藤井太洋氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。
大学中退後、舞台美術、イラストレータなどを経た後に、ソフトウェア会社に勤務する傍らに執筆した長編「Gene Mapper」を電子書籍として、販売します。
同作は2012年のKindle本の年間ランキング小説・文芸部門で1位を獲得します。
2015年には「オービタル・クラウド」という作品で日本SF大賞と星雲賞日本長編部門を受賞しています。
藤井太洋おすすめ作品8選をご紹介~近未来を鮮やかに描く~
自分が書いたものをとにかく読んで欲しいというのが先にあったので、自費出版で電子書籍にしたものを先ず、友人たちに読んでもらう事から始めたそうです。
それが口コミで話題となり、書籍として刊行されたそうです。
また小説を書くために必要な情報は、ひたすら集めていて、PCで原稿を執筆し、タブレットでレポートや論文を検索して、見ているそうです。
1行を書くために1時間を費やして、調べることもよくあるそうです。
そんな藤井太洋氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきますので、お楽しみください。
1、『Gene Mapper ‐full build‐』
遺伝子操作ではない、フルスクラッチで設計された蒸留作物が、広く食べられている近未来が舞台の話です。
遺伝子デザイナーである主人公が、自身が設計した稲の遺伝子崩壊の原因を探っていきます。
遺伝子操作を超えた遺伝子設計という技術を、ありがちな倫理問題は抜きにして実際的な危険と利点を描いています。
希望に満ちた結末も夢物語に終わることなく、一つの提案としての魅力を十分に感じます。
ここがポイント
SFというジャンルにとどまらない、良質な近未来エンターテインメント作品です。
2、『オービタル・クラウド』上・下
地球すらも飛び越えた壮大なスケールであり、地上の小さなモニタから始まる発見が、やがて軍おも巻き込む世界レベルのミッションへと発展していく話です。
天才的頭脳を持ったエンジニアたちの鮮やかな手さばきは見事であり、難解な専門用語は出てきますが、それほど気になりません。
ここがポイント
軌道衛星上のスペースデブリのおかしな動きに気付き始めた幾人かの人たち、国境や立場を超えた様々な能力が結集して、一つになっていく過程に心を掴まれます。
まるで映画を観ているような手に汗握る展開と、魅力的な登場人物が織りなすドラマのような展開から目が離せない作品です。
3、『アンダーグラウンド・マーケット』
仮想通貨が広く利用されている日本を舞台に、仮想通貨に絡んだ仕事に励む若者たちを主人公にした話です。
東京オリンピックが決まり、外国人労働者受け入れを決めた日本が、彼ら独自の地下経済システムを作り上げていたのです。
それが仮想通貨N円であり、この経済システムが普及した社会を前提に、移民や正規雇用から外れた若者たちのビジネス展開が描かれています。
ここがポイント
フィクションなのですが、そう遠くはない未来の展望を見せられているかのようで、N円について仮想という言葉が使われていますが、いつかは現実にあるものと逆転する日が来ることを予感してしまいます。
スピード感がある展開で楽しめる作品です。
4、『ビッグデータ・コネクト』
ITエンジニア誘拐事件を捜査するサイバー課の刑事、万田と捜査に協力を求められた、冤罪で汚名を着せられたハッカー、武岱が挑むビッグデータの闇の話です。
ビッグデータが警察捜査と結びつくためには、何が必要となるのか、そんな問いかけに応えてくれそうな流れで物語は展開していきます。
IT産業の闇というか、ブラック産業の部分が描き出され個人情報保護法やマイナンバーカードの法的な不備が炙り出されています。
ここがポイント
またIT現場の実態やビッグデータの危機といった、今の社会に対する藤井氏の警鐘が事件を軸によく伝わり、且つ、警察小説としても事件の構図やスリリングな展開が楽しめる作品です。
5、『公正的戦闘規範』
IT技術の進化による近未来を描いた5編からなる短編集です。
これからのテクノロジーの進化と。、それがもたらす世界の在り方を否応なしに考えさせられる話の連続です。
技術の進歩は私たちの生活を豊かにしてくれるものでありつつも、間違った方向で使用される危険性も常に孕んでいて、それを怠ると酷い目にあうという忠告も含んでいるように思います。
ここがポイント
近未来をベースとしながらも、それ以外がスリリングであったりと、楽しめる要素がしっかりと入っているのです。
現在と繋がるコンセプトが斬新な作品です。
6.『ハロー・ワールド』
手が届きそうな近未来を描いた5編からなる連作短編集です。
SNSやビットコイン、AIなど、今が旬のITテクノロジーを分かり易く描きながら、その功罪をエンターテインメントに仕立てる手際が見事です。
「Slack」や「GitHub」など、実際にシステムエンジニアの方にはお馴染みのアプリケーションやサービス名が出てくるところに、リアリティ感があり、今までの他の作品とは異なります。
ここがポイント
世界に普及したインターネットは情報の自由な流通で既存の体制を揺るがしますが、体制側が利用すれば、情報を統制するための道具にもなってしまうのです。
IT知識がなくても、すんなり読めて、楽しめる作品です。
7、『東京の子』
近未来の東京が舞台であり、戸籍を捨てて、別人になりすますことしか生きられなかった男が、巨大な企業大学「東京デュアル」に潜む労働問題に挑む話です。
主人公の仮部諌牟は移民向けの何でも屋であり、人探しの依頼からこの学校のシステムの根幹にかかわる騒動に巻き込まれていくのです。
全体に情報量が多く、それが一種の風景となって、東京を描き出していくあたりの臨場感は、藤井氏の真骨頂であり見事です。
ここがポイント
働き方などが、話題になる昨今ですが、流れに身を任せずに、自分から生きる選択をしていかなくてはならないと思える作品です。
8、『ワン・モア・ヌーク』
東京で核爆弾によるテロが計画される2020年3月6日から11日までの6日間の実行する側と阻止する側の攻防が描かれている話です。
2020年のオリンピックを目前を舞台にした、極近未来SFであり、また原子力についての科学小説でもあり、警察ドラマでもあるのです。
たった6日間の時間制限付きの物語は、手に汗握るほどの緊迫感に溢れ、協力し合うテロリストの目的や動機が絡み合い、原爆の対処や製造方法について検討する科学者たちの議論に興奮してしまいます。
もし、この作品のような事件が実際に発生した時に、これらの登場人物のようなクレバーな人たちがいてくれたら、解決できるのではと思いますが、政府の昨今のコロナ対応を見ていると少し不安も残ってしまいます。
ここがポイント
福島原発事故や放射能汚染についても考えさせられる作品になっています。
まとめ
藤井太洋氏の作品はお楽しみいただけましたでしょうか。
もしかしたら、そうなってしまうかもしれない、近未来の様子を楽しんでいただけたと思います。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。
読書の楽しみが広がりますよ。