迫りくる恐怖が味わえる、大石圭氏のおすすめの作品10選をご紹介させていただきます。
大石氏は犯罪者を主人公にした作品を書くことが多いそうですが、たとえそれが凶悪犯やストーカーであっても「絶対的な悪」にはしないそうで、悪い奴だけど応援したくなるようなキャラクター描写を目指しているとのことです。
大石圭おすすめの10選をご紹介~すぐそこにある恐怖を描く~
「履き忘れたもう片方の靴」という作品が、文芸賞佳作を受賞し、1993年に作家デビューを果たします。
2003年には映画、ビデオで有名な「呪怨」のノベライズを手掛けたことでも知られています。
また最近では純文学からホラー路線に移り、人気を博している作家の一人です。
そんな大石圭氏のおすすめの作品10選をご紹介させていただきますので、お楽しみ下さい。
1、『アンダー・ユア・ベッド』
誰からも忘れられている存在感のない男が、9年前にたった一度、一緒にコーヒーを飲んだだけの女性のことが忘れられずに、その女性を探し出して、日常を監視し始めていくという話です。
通常であれば変態的で異常な行いであり、そうですストーカー行為なのです。
その彼女には夫も子どももいたのですが、彼女は夫から酷いDVを受けていたのです。
ここがポイント
しかし、男にとっては彼女との妄想を募らせたりせず、ただ彼女に幸せでいてほしいという想いだけだったのですが・・・。
異常な男の行動ですが、何故か応援したくなる気持ちになってしまいます。
2、『殺人勤務医』
中絶の専門医である青年産婦人科医師が、自分が死に値すると判断した人間を、地下室の檻に閉じ込めて次々に殺めていく話です。
ここがポイント
残虐で生まれながらの殺人者の顔を持つ一面と、満ち足りた生活を送る穏やかな顔の対比が、とても印象的に描かれています。
身勝手な自分本位の正義を振りかざす主人公には、同調する気持ちにはなれませんが、心のどこかに何故か、もの悲しさが残ってしまいます。
独特な偏った世界観を、とても鮮やかに描いている作品です。
3、『湘南人肉医』
神の手を持つ整形外科医が、人肉の魅力に憑りつかれ、女性を殺してその肉を食べることに、強いエクスタシーを感じてしまう話です。
この医者は、小さな頃から人肉に対する興味があり、ある日、手術で吸引した女性の臀部の脂肪を自宅に持ち帰り、食べてしまうのです。
ここがポイント
そこから、この医者のタブーが始まるのです。
人肉ということをなしに考えると、あまりグロテスクな印象もなく、驚くほどあっさりと入り込めてしまいます。
ただ読み手を選ぶ作品であり、歪んだ愛を感じてしまいます。
4、『1303号室』
湘南の海を臨むマンションの1303号室に越してきた人が、次から次へとベランダから落ちて死んでしまう話です。
ここがポイント
恐怖の表現が幾度となく繰り返されるので、心の中にその恐怖がインプットされ、恐怖心が植え付けられてしまうのです。
この部屋に憑りついた怨念の生まれた経緯が、きっちりと描かれているので、かなりの恐怖が味わえます。
この作品が手元にあるだけで怖くなってしまいます。
5、『人間処刑台』
ルール無用のアンダーグラウンドファイトの世界で戦う、日本人ファイターを濃密に描いた話です。
今までの大石氏の作品とは少し作風が異なり、リングの上での男の勝負が如実に描かれています。
ここがポイント
主人公以外のファイターも、魅力的な人物として登場していて、バトルも臨場感タップリに味わう事ができます。
殺伐としたストーリーですが、大石氏の技が光る楽しめる作品です。
6、『女奴隷は夢を見ない』
女性が奴隷として扱われ、その女性をセリにかけ、利益を上げるブローカー達の視点で描かれている話です。
奴隷になるしかなかった女性たちの様々な表情が、淡々と描かれているので、憐れみを感じてしまいます。
性的な表現もかなり出てきますが、エロさはそれほど感じないのですが、生々しさに恐怖を抱いてしまいます。
ここがポイント
売られていく女性の絶望していく有様が、哀しいほどリアルに感じられる作品です。
7、『甘い鞭』
高校生の頃に隣家に住む男に拉致監禁、凌辱された女性が、美貌の不妊治療女医と、SM嬢というもう一つの顔をもっている話です。
ここがポイント
監禁状況下での感情の捻じれや、後遺症が、彼女の後の人生に歪みをもたらしていたのです。
この女性の過去と現在を並列に描くことで、人間に内なる変化をもたらすことが、よく分かります。
虚しさと哀しみが、リアルに伝わってくる作品です。
8、『愛されすぎた女』
女性のことをうまく愛せない切ない男と、お金のせいで身動きが取れなくなった女を描いた話です。
いい年をして借金まみれの女が、高収入というだけで屈折した男と結婚してしまうのです。
ここがポイント
普通の愛とは違う感覚の結婚生活を送るうちに、様々なことが分かり、歪んでしまう日常がそこにあったのです。
詰まるところ、甘い話には裏があるってことなのですね。
9、『地獄行きでもかまわない』
冴えない大学生が、合コンで出会った美女の関心を引くために、自分はベストセラー作家だという嘘をついてしまう話です。
そしてその嘘をつき続けるために、自分の運命を捻じ曲げていき、段々と破滅に向かっていく様子が分かります。
ここがポイント
この大きな嘘で、奈落の底に突き落とされると分かっていながらも、自分を制することができない男だったのです。
ひとつの嘘が、取り返しのつかないことになってしまう、実際にありそうで怖い話です。
10、『モニター越しの飼育』
リベンジポルノを題材にした内容であり、私立高校の女教師が窮地に追い込まれる話です。
ここがポイント
女教師の誰にも言えない秘密が漏れることで、教師である自分と、自分自身の葛藤の中で負の連鎖が始まってしまうのです。
官能的な表現はかなりありますが、ホラー要素もしっかりとあり、言い回しや表現がとても鋭くて読みやすく、迫りくる恐怖の中でも、妙な安心感が芽生えてしまいます。
切ない男女の想いが、交錯する作品です。
まとめ
大石氏の刺激の強い作品は、お楽しに頂けましたでしょうか。
存分に怖がっていただけたかと思います。
まだ読んでいない作品や、興味を持たれたものがありましたら、是非この機会に読んでみてください。