バラエティーにとんだ作風で知られている、乃南アサ氏、その中でも当サイトおすすめの15作品をご紹介させていただきます。
ホラーミステリー、社会派小説、心理サスペンスなど、乃南氏の作風は多岐にわたっていて、その多才さが伺えます。
そしてどの分野の作品も、本当に面白くて没頭して読んでしまいます。
人間の心理を巧みに描く、乃南アサの15作品をご紹介
乃南氏は実際に刑務所などにも出向き、重い犯罪を犯した服役囚の姿も実際に見ているのです。
そんな経験が作品にも反映されていますので、臨場感をタップリ味わう事ができます。
また、無類の相撲好きでもあり、早くから会場に入り、観戦しているとのことです。
やはり、実際に目で見て触ってという経験することで、創作活動にも生かされているのだと思います。
そんな乃南氏の選りすぐった15作品をご紹介させていただきますので、どうぞお楽しみ下さい。
1、『幸福な朝食』
女性の心のずっとずっと奥のほうに潜んでいる、「欲」に視点をあてている話です。
ここがポイント
一人の女性のゆっくりと、しかも確実に壊れていく姿が描かれていて、背筋も凍ってしまうようです。
こうも簡単に人間というものは壊れていくものなのでしょうか。
不気味さもありますが、切なさにも沈んでしまいそうになります。
乃南アサ氏、衝撃のデビュー作です。
2、『微笑みがえし』
表面上は仲良しの女性4人組が、裏の顔は、お互いのことを嫉妬したり見下したりする話です。
男同氏では分からない女性特有の心理描写が、うまく描かれています。
ここがポイント
ホラー顔負けのリアリティに満ちた展開であり、イッキ読み必至です。
人をどこまで許せるかが、テーマになっている作品です。
3、『風紋』上・下
女子高生にふりかかる様々な試練、殺された母親、家庭を顧みない父親、家庭内暴力を繰り返す予備校に通う姉の話が綴られています。
ここがポイント
女性作家らしい細やかな描写の陰に、男性的な力強いストーリー展開になっているので、飽きることはありません。
見えない残酷な傷を負う家族に、残されるものは何か、戸惑いしか残されないのでしょうか。
様々な思いが絡む合う、複雑な心境になってしまう作品です。
4、『凍える牙』
殺人事件の真相を突き止めるために、警視庁の女性刑事、音道貴子が立ち上がる話です。
ここがポイント
歯車が合わない中年親父刑事と、コンビを組まされることになるのですが、同じ目的を持って、挑んでいく二人は、やがて息も合ったコンビになっていくのが、分かります。
長編ですが、長さを感じさせないストーリー展開で、グイグイ引き込まれてしまいます。
直木賞受賞作品であり、物語の楽しさに浸ることができる一冊です。
5、『結婚詐欺師』上・下
40代のプロの結婚詐欺師の男性が、一人の刑事によって、じわりじわりと追い詰められていく話です。
ここがポイント
刑事の視点で話は進んでいき、結婚詐欺師の手の内も面白いほど堪能できます。
私は絶対騙されないという人ほど、危ないのかもしれません。
心理描写とキャラクター設定がうまくマッチしていて、とても楽しめる作品です。
6、『女刑事音道貴子 花散る頃の殺人』
6編からなる短編集で全体に無理のないストーリー展開で構成されていて、とても読みやすくなっています。
主人公の音道刑事の人となりの行動が、コンパクトにまとめられているので、とても親しみが湧いてしまいます。
ここがポイント
何気ない平凡な日常の中に、潜んでいる魔物のようなものが、見え隠れして、人を不安に陥れてしまうことが分かります。
スキマ時間に読むには、最高の短編集です。
7、『涙』上・下
結婚式を翌月に控えた女性が、一方的に別れを告げられた男性を追いかけるという、切ない話です。
ここがポイント
ひたむきに真相を追い求める女性の姿が、あまりにもけなげで、何かしら心に迫ってくる寂しさを感じてしまいます。
それにしても、こうまでして、執着する女性の気持の真の理由が、最後には明らかになっていくのです。
切なすぎる名作に、間違いないと思います。
8、『未練ー女刑事音道貴子』
音道刑事が遭遇する、男同士の絆が無残に引き裂かれていく様子を描いた、表題作を含めた5編からなる短編集です。
事件に関わるたくさんの人間が、とてもリアルに描かれていて、臨場感がタップリと味わえます。
ここがポイント
辛くて救いもなく、やりきれなさが残る話ばかりですが、それでも人は、何かに救いを求めるものなのです。
心が揺れ動いてしまう短編集です。
9、『鎖』上・下
占い師夫婦と信者4人が惨殺された事件に、音道刑事が挑んでいく話です。
ここがポイント
またまた相方との相性が合わず、今度は単独で捜査をすることになるのですが、思いもよらぬ展開になってしまうのです。
中盤から終盤にかけては、まさに手に汗握るような展開で目が離せません。
状況表現のリアリティさと人間の描写に、思わず引き込まれてしまう作品です。
10、『晩鐘』上・中・下
殺人事件が起き、殺された遺族と加害者の家族にふりかかる話です。
同氏執筆の「風紋」の続編であり、あれから7年も経っているのにまだ、悲しみは収まらなかったのです。
ここがポイント
やはり、被害者側の家族も加害者側の家族も、一生抱えていく問題だったのです。
月日が経ち、世間は忘れた事件でも、当事者たちには終わりは来ないのでしょうか。
たくさんの人に、読んでいただきたい作品です。
11、『しゃぼん玉』
犯罪を犯した孤独な青年が、逃げ込んだ先は過疎の村、そしてそこで青年が変貌を遂げていく話です。
不幸な家庭環境で育った人間は、知らず知らずのうちに、自分の思惑とは逆の方向へ進んでいってしまうのでしょうか。
ここがポイント
寂しさゆえ、温かさがあれば、人間は何度でも立ち直ることができるということが、分かります。
誰もに本当の優しさを与えられる人間こそ、すばらしい人間だと感じた作品です。
12、『風の墓碑銘』上・下
音道、滝沢の両刑事が登場するシリーズの第6作であり、白骨死体の発見から、認知症老人の殺害事件へと発展していく話です。
序盤はスローテンポで刺激に乏しかったのですが、中盤から終盤にかけては、独特の緊迫感のあるテンポでストーリーは展開していきます。
ここがポイント
二人共お互いに反発しながらも、一目置いている微妙な距離感が、何とも言えず好感を抱いてしまいます。
人物描写の巧みさが、光る作品です。
13、『いつか陽のあたる場所で』
刑務所で知り合った二人の女性が、新しい人生を下町で始める話です。
下町での日常は初めて味わう、筒抜けな人情溢れる街であり、ささやかな幸せが味わえる街だったのです。
しかし自分たちの犯した過ちは、家族も巻き込んで、周りの人を犠牲者にしていることも事実なのです。
ここがポイント
幸せは、ささやかなのが一番だと思える作品です。
14、『すれ違う背中を』
「いつか陽のあたる場所で」の続編であり、下町の生活にも慣れてきた二人に、新たな出来事が起こる話です。
日常生活の中にある、ささやかな幸せに、感謝しながら生きていく二人の姿が描かれています。
素敵な二人ではあるけれども、犯した罪の償いは、この先も十字架を背負って、生きていかなければならないことなのです。
ここがポイント
しかし、分かり合える人がそばにいることの、幸せも感じる作品です。
15、『地のはてから』上・下
極寒の地、北海道、知床で逞しく生きる開拓民の少女の話です。
読み進んでいくほどに、苦しくて、とても厳しくて、どうしようもない気持ちが溢れてきます。
ここがポイント
自然に生きるひと時の素晴らしさと、厳しさを味わうことで、人間の強さが備わっていくのが分かります。
厳しい時代を生き抜くということの辛さが、痛いほど分かる作品です。
まとめ
乃南アサ氏の作品のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
まだ、読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。
きっとご満足いただけると思います。