余韻が残る描写で魅了する、乾ルカ氏のおすすめの作品を12選ご紹介させていただきます。
短期大学卒業後、銀行員や官庁の臨時職員を経て、2006年に短編「夏光」という作品で、第86回オール讀物新人賞を受賞し、作家デビューを果たします。
その後も精力的に執筆活動を続け、創作した作品は各文学賞の候補にノミネートされています。
乾ルカおすすめ作品を12選ご紹介~心に迫る着地点を描く~
作風としましては、ホラーやダーク・ファンタジーの要素が強い作品を手掛けていますが、時には青春小説も書くことがあるようです。
作品は基本的にハッピーエンドにしたいと思っていて、どこかに救いを残して書き終えたいそうです。
そんな乾ルカ氏のおすすめの作品を12選ご紹介いたしますので楽しんでください。
『夏光』
怖さと不思議さを合わせ持った、6編からなる短編集です。
ここがポイント
心理描写も丁寧でとても読みやすく、ホラー要素に拘ることなく、普通の文学作品としても十分に楽しめます。
子供たちの生来持っている力や鋭い視線をうまく捉えて、描き出しています。
少し切ない余韻が残る作品です。
『プロメテウスの涙』
アメリカの死ねない死刑囚と、奇怪な発作を繰り返す日本の少女の話です。
日米にまたがる謎に、二人の女性精神科医が挑んでいきます。
ここがポイント
何の関連性もない二つの事例がやがて、繋がっていることが分かってきます。
不思議な世界観が味わえる作品です。
『メグル』
大学学生部でアルバイトを斡旋する女性職員が絡んだ、5編からなる連作短編集です。
5人の若者が紹介されたアルバイト、「あなたはいくべきよ。断らないでね。」と言うのが、女性職員の常套句であり、そしてそのアルバイトは学生たちに、いろんなことをもたらすことになります。
オカルトチックであったり、不思議系の話とかですが、総じてどれも楽しい話ばかりです。
ここがポイント
設定が斬新で面白い作品です。
『あの日にかえりたい』
不思議な安らぎを与えてくれるような、感動の6編からなる短編集です。
ここがポイント
6話全てが北海道が舞台であり、リアルな日常に潜む、非日常が描かれています。
「あの日」にフラッシュバックする、主人公たちの言動に胸が締め付けられる思いがします。
単なるファンタジーではない感動作品です。
『蜜姫村』
陸の孤島のような「仮巣地区」に蟻の研究のため訪れた夫婦にふりかかる話です。
ここがポイント
なんとなく感じる違和感から、夫婦はこの村に隠されている秘密に気付いていきます。
文明から隔離されたこの村は異様な雰囲気が漂い、よそ者を寄せ付けなくしていたのです。
ファンタジックホラー作品です。
『てふてふ荘へようこそ』
ある街の高台に佇む、おんぼろアパートを舞台にした、6編からなる連作短編集です。
ここがポイント
格安の訳ありアパートには、同居人(幽霊)たちが、それぞれの部屋に居ついていたのです。
それぞれに屈折した悩みのある住人が、不思議な同居人と相反しながらも、やがて心を通わしていきます。
作品から滲み出る温かさに涙腺が緩んでしまう作品です。
『ばくりや』
自分の能力を自分にはない誰かの能力と交換できる店「ぼくりや」を描いた、7編からなる連作短編集です。
忌み嫌っていた、自分の能力と別れを告げた人間たちのその後を描いています。
ブラックな話、切なくて泣ける話、笑える話など、様々な内容でとても楽しめます。
ここがポイント
やはり自分の能力は自分で受け入れていくしかないのです。
※ばくり:北海道の方言で交換するの意です。
『たったひとり』
大学の廃墟探索サークルの男女5人のメンバーを襲うタイムループの話です。
5人が向かったのは、土砂崩れで一人の遺体が発見されたラブホテル、着いた途端27年前の土砂崩れ30分前にタイムループしてしまいます。
果たして5人はループから抜け出すことができるのか。
ここがポイント
そこで起こる不可思議な現象を目の当たりにして、徐々に現れてくる人間のエゴイズム。
極限状態の心理描写が面白い作品です。
『願いながら祈りながら』
北の大地の片隅にポツンと佇む中学校の分校を中心に展開していく話です。
生徒5人と新米教師の悩み、苦しみながらの成長を描いています。
ここがポイント
章ごとに主人公が入れ替わる構成になっていて、各自の思考や思惑が楽しめます。
青春一歩手前の眩しい作品です。
『モノクローム』
ここがポイント
母子家庭で育ちながら、幼い時に母親に捨てられた少年が囲碁を通して、自分を取り戻そうとする話です。
厳しい幼少時代を過ごしてきた少年が、過去にとらわれながらも、自立していこうとする姿が切なく描かれています。
少年の不器用でありながらも、ひたむきに考え、変わっていく姿には感動を覚えてしまいます。
少年の成長を描いた切ない作品です。
『森に願いを』
人生に何らかの負い目を持つ人たちが訪れる、静かな感動を呼ぶ7編からなる森のミステリー短編集です。
ここがポイント
都会の真ん中に存在する深い森には、大きな闇をかかえた人たちが吸い寄せられるように集まってきます。
そして、森の番人と出会い、自然と向き合い、笑顔を取り戻していくのです。
心が優しさに包まれる作品です。
『奇縁七景』
様々な味わいのある7編からなる、奇妙な短編集です。
ゾクッとさせるもの、薄気味悪いもの、心和むものなど、話によって受ける印象が異なったものが収録されています。
ここがポイント
何気ない、そこにある日常がふとした瞬間に、奇妙な世界へ変わる展開になっていきます。
独特の感触が楽しめる作品です。
まとめ
乾ルカ氏の作品は楽しんでいただけましたでしょうか。
まだ、読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
新たな楽しみが広がると思います。