多才なテーマや切り口で魅了する、麻見和史氏のおすすめの作品10選をご紹介させていただきます。
大学卒業後、2006年に「ヴェサリウスの柩」という作品が東京創元社主催の第16回の鮎川哲也賞を受賞し、作家デビューを果たします。
デビュー作と第二作目の「真夜中のタランテラ」は主に医学、医療を題材としていましたが、3作目からは、警察小説を中心に作品を刊行しています。
警察小説のいいところは、探偵小説と違って捜査の為の動機が明確なことであり、もしも私立探偵だと、何故一市民が捜査に首を突っ込むのかという、動機が必要になってくるからなのだそうです。
麻見和史おすすめ10選をご紹介~ユニークな展開と謎解き~
警察ものをよく読まれる読者の方は、ある程度警察組織についても理解されていて、登場人物それぞれの立ち位置も分かっていてくれるので、最小限の説明で済むのだそうです。
また、小説家として映像化は一つの夢でもあるので、実現したらいいなあと思いながら執筆しているそうです。
途中で退屈しないように、テンポよく事件を起こしていこうかとか、キャラクターがただの道案内にならないようにするとか、いろいろと、考えながら、もし映像化されても、喜んでもらえるような工夫をしているそうです。
そんな麻見和史氏のおすすめの作品10選をご紹介させていただきますので、お楽しみください。
1、『石の繭 警視庁殺人分析班』
警視庁殺人分析班シリーズの第一弾であり、モルタルで固められた連続殺人事件を追う、新人女性刑事、如月塔子をヒロインとした話です。
突然、捜査本部にかかってくるトレミーと名乗る謎の人物からの電話は、何故か塔子を交渉相手に指名してきたのです。
犯人は何故、死体をモルタルで固めたのか、何故、塔子を指名するのか、そしてその事件の裏に隠された真相とは、、、。
ここがポイント
ミステリーというよりも地道に捜査しながら、犯人を捜していく刑事モノであり、なかなか楽しめます。
テンポが良く読み易く、登場人物のキャラクラーも印象に残る作品です。
2、『蟻の階段 警視庁殺人分析班』
警視庁殺人分析班シリーズの第二弾であり、遺体を囲むように、たくさんの品々で飾り付けされた殺人事件の話です。
今回の事件は絵をモチーフにしたした犯罪であり、小物がいくつか出る前回同様に、塔子を中心に物語は展開していきます。
惨殺死体を取り囲むように置かれた謎の品々、混乱する捜査を尻目にさらに「過去の亡霊」を名乗って、警察OBの自宅に電話をかけてきた犯人。
やがて更なる被害者が、犯人はだれなのか、そして犯人の目的は一体何なのか、散りばめられた伏線と複数の事件が見事に絡み、最後まで飽きることなく楽しめます。
ここがポイント
少しずつ真相にたどり着いていく過程が、クセになる作品です。
3、『水晶の鼓動 警視庁殺人分析班』
警視庁殺人分析班シリーズの第三弾であり、スプレー塗料で部屋中を染められた殺人事件に挑む話です。
それと、時を同じくして、都内各所で発生するビル連続爆破事件で、大混乱に陥る捜査陣は、果たして事件の真相に辿りつけるのでしょうか。
今作は塔子はじめ、主要キャラの個性が、うまく描き分けられていて、捜査本部の緊張感もリアルに伝わってきます。
事件の謎の提起が、大変魅力的であり、アッという間に物語に引きこまれてしまいます。
ここがポイント
塔子が成長していく楽しみは勿論の事、十一係の個性豊かなレギュラー陣の個性的なキャラも楽しみの一つになります。
地道な捜査とひらめきの推理が、事件を解決へと導く作品です。
4、『虚空の糸 警視庁殺人分析班』
警視庁殺人分析班シリーズの第四弾であり、東京都民の命をネタに、警視庁へ2億円を要求する犯人に挑む話です。
マンションの非常階段で見つかった、自殺に偽装された刺殺死体、一日一殺の都民1千三百万人を人質に、警視庁を脅迫するという前代未聞の犯罪との対決が幕を開けるのです。
次々に新たな犠牲者が出る中、警察組織をを挙げた必死の捜査の末に、驚きの人物が浮き上がってくるのです。
ここがポイント
猟奇的且つ衝撃的な事件の始まりから、伏線やミスリード、そして意外な結末とバランスよく描かれています。
シリーズを重ねる毎に、塔子の成長ぶりが楽しみになる作品です。
5、『聖者の凶数 警視庁殺人分析班』
警視庁殺人分析班シリーズの第五弾であり、腹部に謎の数字が書きこまれ、顔や腕を薬物で溶解された絞殺死体の殺人事件を追っていく話です。
今作は数字が関係する謎解きに挑戦する一方で、十一係のヒロインである、如月塔子の成長過程におけるターニングポイントにもなっています。
ここがポイント
塔子が犯人の情をおもんばかる優しさは、捜査の妨げにもなってしまいますが、今作では、彼女のそういった人間味溢れる特性を生かした、刑事としてのモチベーションを獲得することになるのです。
ラストで明かされる犯人と事件の真相に、何とも切なくて、やるせなくなってしまう作品です。
6、『警視庁文書捜査官』
警視庁文書捜査官シリーズの第一弾であり、文章心理から謎を解いて犯人に迫っていく話です。
ここがポイント
文章心理学を学んだ鳴海理沙警部補と矢代巡査部長の二人だけの班で構成されていて、現場に残されたメモとか文字とかカード等から捜査一課よりも先に犯人に迫っていくのです。
今回は右手首が切断された身元不明の死体の側に、残されていたレシートに記された謎のメモとアルファベットのカードを手掛かりに、捜査陣に疎まれながらも、事件に挑んでいくのです。
鳴海の天然ぶりと、それを一生懸命フォローする矢代の掛け合いも面白く描かれています。
続きが楽しみになる作品です。
7、『永久囚人 警視庁文書捜査官』
警視庁文書捜査官シリーズの第二弾であり、新しい仲間の夏目静香巡査が加わり、全身をワイヤーで巻かれた遺体と、残されたダイイングメッセージの謎に挑んでいく話です。
謎の自費出版本の「永久囚人」に絡む、連続殺人事件が発生し、文書捜査班のメンバーが、事件の真相を追う展開になります。
ここがポイント
ただ単に猟奇的犯罪を扱うのではなく、不幸な巡り合わせによって、今回のような悲劇的な事件が起きてしまったことに重きをおいていて、事件の全貌が明らかになる終盤の展開は見事です。
キャラクターと、謎解きの楽しさが味わえる作品です。
8、『緋色のシグナル 警視庁文書捜査官エピソード・ゼロ』
警視庁文書捜査官シリーズの第三弾であり、文書捜査官になる前の鳴海理沙が関わった事件の話です。
顔面が何度も殴打された遺体が見つかり、その近くの壁に「品」、「蟲」という赤い文字が残されていたのです。
警視庁捜査一課の刑事である、国木田は代々木署の鳴海理沙と共に、事件解決に向けて動いていきます。
システム開発系のIT企業社員の悲惨ともいえる状況が描かれ、事件の真相とも大きく関わってきます。
ここがポイント
異色コンビの刑事モノが楽しめる作品です。
9.『灰の轍 警視庁文書捜査官』
警視庁文書捜査官シリーズの第四弾であり、一人暮らしの老人が絞殺され、その傍らにあった殺人計画のメモを手掛かりに、事件解明に挑んでいく話です。
解読班に新たに臨時でIT担当の谷崎廉太郎巡査が加わり、新たに見つかった切り貼り文と共に、犯人を割り出そうとする鳴海ですが、うまくいかず捜査は混迷を極めていきます。
一方で解読班のサブリーダーとなった矢代の必死の捜査で、被害者の甥が重要参考人として浮かび上がってきます。
ここがポイント
しかし、その甥もまた絞殺され、連続殺人の原因として明かされていく「サイレントチェンジ」という言葉がキーワードになっていくのです。
アナログとデジタルを融合させた捜査が楽しめる作品です。
10、『影の斜塔 警視庁文書捜査官』
警視庁文書捜査官シリーズの第五弾であり、文書解読班を目の敵にする女性管理官からの密命がくる話です。
ある事件に関して失踪した男性を捜索し、その人物が所持する文章を入手するというものであり、手がかりはほぼなく、上司が出張で不在の為、全ての判断は理沙の手に委ねられたのです。
ここがポイント
そして、今作での展開はこれまでとは大きく異なり、警察内部の暗部を暴く話だったのです。
少ない情報を駆使しながらも、自分たちの味方が誰なのかを判断しつつ、事件の本筋に迫っていく難しい展開の作品です。
まとめ
麻見和史氏の作品のご紹介は、お楽しみいただけましたでしょうか。
数ある警察小説の中でも、ユニークな展開と謎解きに定評があります。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。
読書の楽しみが広がりますよ。