女性特有のテーマを扱う、垣谷美雨氏のおすすめ作品9選をご紹介させていただきます。
大学卒業後、ソフトウエア会社勤務を経て、2005年に「竜巻ガール」という作品が第27回小説推理新人賞を受賞し、作家デビューを果します。
結婚難、高齢化と介護、住宅の老朽化などの社会問題や、現実にあり得たかもしれない世界を題材にした作品で知られています。
垣谷美雨おすすめ9選をご紹介~女性が直面する悩みを描く~
垣谷氏が小説を書くのは、社会に対する怒りみたいなものが、原動力になっているそうです。
また、友人と話をしたり、テレビや新聞を見たりする中で、ちょっとした一言が「これはひどい、なんとかしなきゃ」と心に突き刺さるそうなのです。
そうすると、ぱーっと想像が膨らんでいき、創作ができるみたいです。
日本はいまだに封建的であり、男尊女卑の風潮がまだ残っていると思うので、小説を通して少しでも知ってもらいたいそうです。
そんな垣谷美雨氏のおすすめの作品を9選ご紹介いたしますので、どうぞお楽しみください。
1、『竜巻ガール』
女性が主人公であり、男女関係の機微を絶妙に描いている4編からなる短編集です。
どの話も現実社会の一面を上手く切り取っていて、増幅したり、誇張したりと面白くコンパクトにまとめ上げています。
ここがポイント
いずれも一生懸命に世渡りしている、女性への応援歌のように感じてしまいます。
ミステリー色は強くなく、さりとて一般小説として捉えるのとも少し違い、人の想いと意図が絡み合って、意外な真相が待ち受けているのです。
それが誰かにとっての幸せであり、誰かにとっても不幸せなのかは、当の本人しか分かり得ないのです。
女性の強さを感じてしまう作品です。
2、『リセット』
50歳目前の現状に不満をもった同級生の女性3人が、高校時代にタイムスリップさせられてしまう話です。
誰もが考えたことがある、もし過去に戻ってもう一度やり直せたらという思いや、後悔の気持ち、そして他人の人生を羨む気持ちなどが描かれています。
ここがポイント
独身ならではの、あるいは家庭を持つ身ならではの表現が、抜群にうまく描かれています。
年齢を重ねたから分かること、年齢を重ねても変わらないことが、3人のそれぞれの生き方から、具体的に感じることができます。
結局、今ある人生を自分の力で精一杯生きていくことが、大切だと想える作品です。
3、『結婚相手は抽選で』
少子化対策の為、独身の男女をランダムにお見合いさせて、3回断ると、テロ撲滅隊に2年間従事しなくてはならない「抽選見合い結婚法」という奇妙な法律をテーマにした話です。
未婚男女が増えて、出生率低下に悩む政府の法案が可決し、結婚相手を抽選で選ぶことになり、アテのある人は慌てて結婚したりと中々大変な世の中になってしまいうのです。
奇想天外なストーリーですが、もしもこんな法律があったなら、現時点では結婚とは縁がない人たちが結婚したり、普段の生活では出合わない異性との出会いがあったりするのかもしれません。
ここがポイント
現実離れはしていますが、婚活に疲れた人たちに、是非読んで欲しい作品です。
4、『夫のカノジョ』
夫の浮気相手の彼女と、奥さんの体が入れ替わってしまう何とも奇妙な話です。
主婦の菱子は夫の浮気を確信し、浮気相手のカノジョ、星見に会いに行くと、不思議なお婆さんが現れ、二人の体を入れ替えてしまうのです。
そしてお互いがお互いになる生活が、始まってしまうのです。
互いの生活を経験するうちに、菱子は夫の職場での姿を見ることとなり、一方で浮気相手の星見は自分の生活の中で、子供やPTAに影響を及ぼしていくのです。
ここがポイント
自分の知らない世界はたくさんあり、そこで生活している人もたくさんいて、自分ひとりが頑張っているつもりでも、他人からしてみれば、向かっている方向が違ったり、歓迎されるものでないことだってあるのです。
相手の立場を考えて、自然体で生きていくのがいいと思わせてくれる作品です。
5、『あなたの人生、片づけます』
掃除や片付けができない人の家に出向き、相手の心と向き合い、自宅の掃除を通して、心の中のシコリをほぐしてくれる、おばちゃんを描いた4編からなる短編集です。
心に余裕がないと、部屋を片付ける気力も途切れてしまうのです。
片付け屋の大庭十萬里おばちゃんが、部屋の要らないものを捨てるのと一緒に、心に奥底に積りに積もった掃除までしてくれるのです。
自分の持ち物や、捨てられない物へのつまらない執着は、自分の生き方や、人との関わり方が関係していると実感してしまいます。
ここがポイント
この大庭おばちゃんの指導の仕方は、他人の生き方に入り込まず、強制もせず、なのに必要な手助けはするといった絶妙な手法で解決していくのです。
前向きな考え方を促してくれる作品です。
6、『老後の資金がありません』
タイトルの通り、老後の資金がなくなってしまう家族を、主婦である篤子の視点で描いた話です。
社会問題にもなった老後資金問題をいち早く取り扱った作品であり、序盤はお金に困る老夫婦に、次々に迫る冠婚葬祭によって、みるみる減っていく預金の事が描かれています。
そして将来の不安を感じていたところへ、さらに夫と自分のリストラが発生してしまうのです。
こんな絶望的な状況に、どう立ち向かうのか、心配性すぎる篤子の不安は、なかなか切実でリアリティ感満載です。
しかし、姑が越してきてから、話は明るい方向へ向かっていき、空気感が変わっていくのです。
ここがポイント
結局、明るく生きていくことが、肝要であると改めて感じる作品です。
7、『後悔病棟』
患者の真の声が聞けて、尚且つ、人生のやり直しを疑似体験できる、不思議な聴診器を拾ったところから始まる話です。
場の空気が読めず、いつも不用意な発言により、患者を怒らせてしまう医師の早坂ルミ子。
ひょんなことから、患者の気持がわかり、過去にタイムスリップできる不思議な聴診器を手に入れるのです。
末期癌の患者の気持がわかる聴診器で、患者たちの昔の人生の別れ道のもう一つを、一緒に垣間見る女医の早坂。
ここがポイント
やり直したからと言って、今までの人生より良いとは決して限らないことを、つくづく感じてしまいます。
人はみな何かしらの後悔を抱えて、生きているという事が分かる作品です。
8、『四十歳、未婚出産』
未婚のまま出産するか否かを迫られる、40歳独身の優子の話です。
結婚とか世間の目とか、一通りは悩んではみるものの、それなりに仕事ができて、収入があることや、この先自分が妊娠できることはないだろうと思うタイムリミットから、基本的には出産前提で思考が進んでいくのです。
ここがポイント
パワハラやマタハラは言うに及ばず、妬みや偏見からくる遠慮のない批判の嵐等、更には国際結婚や不妊治療問題も絡めて、畳みこむように女性目線で語られています。
会話とエピソードが、社会問題を浮き彫りにしている作品です。
9、『うちの子が結婚しないので』
老後を考え始めた母親の千賀子が、28歳の一人娘、友美の将来を不安に思い、親婚活を始める話です。
娘の良縁を探して、親婚活に乗り出した一家の姿を通じて、結婚とは何かを読者に自問自答させているように感じてしまいます。
最初は家柄とか相手のスペックとかに拘っていた母親が、周囲の悲喜劇の中で、再度自身の結婚感を含めた人生や、家族との関係性を問い直していきます。
ここがポイント
これからの結婚観を改めて考える上でも、興味深い作品です。
まとめ
垣谷美雨氏の作品のご紹介は、お楽しみいただけましたでしょうか。
女性が直面する悩みを面白おかしく、尚且つ真剣に描いています。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。
きっとハマってしまうと思います。