時代小説の面白さが満喫できる、朝井まかて氏のおすすめ作品8選をご紹介させていただきます。
甲南女子大学文学部国文学科卒業後、広告制作会社に就職し、コピーライターとして勤務後、独立します。
その後、小説家になるため、大阪文学学校で学び、2008年「実さえ花さえ」という作品で、小説現代長編新人賞の奨励賞を受賞し作家デビューを果たします。
2013年には歌人、中島歌子の生涯を描いた「恋歌(れんか)」という作品で、本屋が選ぶ時代小説大賞2013を受賞します。
そしてついに2014年に同作品で第150回直木賞を受賞し、その後も各文学賞を受賞して、活躍し続けています。
朝井まかておすすめ8選をご紹介~思い立ったら人生のギアチェンジ~
朝井氏は作家になる夢を諦めずに一発発起して、文学学校に通いだしたのは47歳の時であり、もし、書いたものがダメだったら、小説を書くという夢をすっぱりあきらめようと、覚悟を決めていたそうです。
だからこそ、書くことが怖くて、踏み出せなくなってしまうこともあったそうです。
結局は文学学校の講師の方に「あんたコピーライターで物書きやろ、だったらとっとと書け」と背中を押されて、やっと書き出せたそうです。
そんな朝井まかて氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきますので、お楽しみください。
1、『花競べ 向嶋なずな屋繁盛記』
植木職とも庭師とも少しちがう、花師の新次とおりん夫婦が、向嶋で営む「なずな屋」を舞台に繰り広げる人情話です。
江戸時代に生きた職人「花師」の生き様、花師の夫婦を取り巻く人たちの日常と心の機微、そして花師が育む草木や花の描写にうっとりしてしまいます。
ここがポイント
四季折々に変化する花や草木、職人が新たに作り出す品種などを通して、過去も現在も変わらない人間の心が描かれています。
それに、登場人物もみな魅力的であり、ついつい入れ込んでしまいます。
時代小説の面白さを教えてくれる、肩が凝らずに気軽に楽しめる作品です。
2、『ちゃんちゃら』
孤児で荒れていた、ちゃらが、庭師の植辰に身を寄せて、庭師として成長していく話です。
庭師をしていろんな庭を手掛け、成長する姿が描かれ、各章ごとにいろんな庭の話が出てきて、それにちょっとした事件も絡んでくるのです。
ここがポイント
長編小説の形式をとっていますが、連作集として読むことができ、飽きずに楽しめます。
ちゃらのアイデアもそれぞれに興味深く、作庭の技術も知ることができ、仕事に真摯に取り組むちゃらの姿が、輝いて見えます。
また、ちゃらの周りの人たちも皆良い人ばかりで、人情味がタップリ溢れています。
宿敵が現れたり、淡い恋模様もあったりして、盛りだくさんで楽しめる作品です。
3、『すかたん』
夫を亡くし、大坂の青物問屋の女中奉公に出た知里、そこの若旦那との恋物語です。
慣れない仕事や、東西の習慣の違いに四苦八苦し、厳しいおかみさんから叱責されながらも、知里は浪速の食の豊かさに目覚めていくのです。
ここがポイント
すかたん同士の知里と、若旦那の清太郎が喧嘩をしながらも、大坂の青物と真剣に向き合っていく姿には感動してしまいます。
昔の大坂の街並みやお祭りなどの描写は、人々の息遣いまで伝わるようで、読みながらワクワクしてしまいます。
喜怒哀楽が満載の味わいのある作品です。
4、『先生のお庭番』
長崎の出島を舞台にした、蘭医シーボルトの薬草庭園を任された庭師、熊吉の話です。
シーボルトの命により、出島に薬草園を作り、それを守り、シーボルトが欧州に日本の草花を紹介する助力となった庭師、熊吉の半生が描かれています。
たくさんの犠牲を払い、リスクを冒して自分を信じてついてきた者たちを裏切り、その先でシーホルトが叶えたかったものとは、一体何だったのでしょうか。
だからこそ、何としてもそれを叶えてほしいと願う熊吉の胸の内を想うと、苦しくなってしまいます。
ここがポイント
捨てきることができない人情の深さを感じてしまう作品です。
5、『ぬけまいる』
江戸女の三人組が、家庭も仕事も放りだして、突如お伊勢参りへ行く話です。
人には言えない事情や悩みを抱えながらの出発であり、道中での出会いや、出来事など波乱に満ちた旅を通して、幸せの尺度を見つめ直していきます。
三人の旅は短いところでも一週間、長いところでは一ヶ月以上も逗留して、大金を取られたり、稼いだり、ホロリとしたりして、目が離せなくなるほどに楽しませてくれます。
ここがポイント
旅することで、今まで気づかないことに気付いて、これからの人生の明るい兆しが見えてきます。
すったもんだを繰り返しながらも、問題を解決していく様は本当に痛快で楽しめる作品です。
6、『恋歌』
歌人である、中島歌子の幕末から明治にかけての壮絶な半生を描いた話です。
大恋愛を経て結ばれた夫は水戸藩士であり、尊王攘夷と幕府擁護派の勢力争い真っ只中の幕末で、彼らも時代に翻弄されていきます。
ここがポイント
多くの命が失われ、多くの憎しみが生まれた幕末にあって、生き延びて大成した彼女は、潔い人生を最後まで貫いたのです。
幕末の匂いや、水戸藩の立場、天狗党の乱など登世の視点から分かり易く描いていて、勝てば官軍の言葉の通り、正義と不義が混沌としていた時代の息遣いが感じられる作品です。
7、『眩(くらら)』
北斎の娘、葛飾応為が絵に命を燃やした、熱き生涯を描いた話です。
絵一筋に生きる彼女を偉大な絵師の父、小言の多い母、厄介者の甥、色男の兄弟子が取り巻いているのです。
何よりも絵を描くことにのめり込み、その他のことはおざなりにしてまでも、暇があれば彼女は絵を描いていたいのです。
偉大な北斎と必然のように絵師として生きる応為の、決して順風満帆ではなかった生活が、さらりと描かれています。
ここがポイント
限りある人生、前を向いて後悔しないように生きていこうと思わせてくれる作品です。
8、『雲上雲下』
ここがポイント
お伽ばなしがたっぷりと詰まっていて、なつかしくて、そして温かな気持ちになれる物語です。
三部構成になっていて、一章は草どんが子狐に語る民話であり、二章は小太郎伝説を基にした物語で、三章は福耳彦命です。
懐かしくて少しひんやりとしていて、昔は誰もが知っていた物語であり、昔ばなしと言われて久しい数々の物語が、徐々に語り継がれなくなる悲しみや寂寥を感じてしまいます。
今では消えゆく「昔々あるところに・・・」というフレーズの物語はゲームがはびこる現代においては、語り継ぐ親も少なくなってきているようだと実感してしまいます。
昔から伝わってきた物語がいつの時代までも、残ることを切に願いたくなる作品です。
まとめ
朝井まかて氏の作品のご紹介は、お楽しみいただけましたでしょうか。
物事に行き詰ったら、思い切ってギアチェンジをしてみるのもいいかもしれません。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
読書の楽しみが広がりますよ。