確かな描写で魅了する、高村薫氏のおすすめ作品を11選ご紹介させていただきます。
大学卒業後、外資系商社勤務を経て、執筆活動に専念します。
1990年、金塊強奪計画を描いた「黄金を抱いて翔べ」という作品で、日本推理サスペンス大賞を受賞し、作家デビューを果たします。
高村薫おすすめ作品11選をご紹介~形のないものを言葉で描く~
その後も数々の作品を発表し、リアリティに満ちた社会派ミステリー作家としての地位を確立していきます。
文体も作風も硬質であり、女流作家をイメージさせないところが、高村氏の特徴なのです。
また、描写力の確かさに定評があり、映像化された作品も数多く、生み出しています。
そんな高村薫氏のおすすめの作品を11選ご紹介いたしますので、お楽しみください。
1、『黄金を抱いて翔べ』
大阪の街でしたたかに生きる6人の男たちによる、金塊強奪計画の話です。
魅力ある登場人物達がそれぞれの個性を発揮して、犯罪の準備に臨んでいく姿は、何かに憑りつかれたようにも見えます。
ここがポイント
男たちをそこまで突き動かすものは、一体何なのでしょうか・・・。
それぞれの生い立ちや運命が絡み合い、世の中の不条理への反逆が形となって、計画は進んでいきます。
サスペンスフルな語り口に、圧倒されてしまう作品です。
2、『わが手に拳銃を』
裏社会で生きる、銃に取り憑かれた男たちが、非常な戦いにのめり込んでいく話です。
文章の迫力もさることながら、旋盤作業や拳銃の解体手順なども事細かに描かれています。
残虐な描写や暴虐シーンはあまりありませんが、紛れもなく、ハードボイルド作品です。
ここがポイント
闇社会の冷酷を見事に描いている作品です。
3、『リヴィエラを撃て』上・下
リヴィエラというコードネームを持つ男と、彼が関わったある機密書類を巡る事件の話です。
舞台は殆どがイギリスであり、中国政府や日本の警察、外務省なども絡んで、血で血を洗う謀略合戦が繰り広げられていきます。
表の顔と裏の顔、敵と味方の区別も分からないくらいに、混乱してしまいます。
ここがポイント
男たちの熱き戦いが見れる作品です。
4、『マークスの山』上・下
合田雄一郎刑事シリーズの第一弾で、過去に「アルプス」で起きた事件から、被疑者、被害者、刑事やその他の関係者に視点をおいて、描かれている話です。
警察内部の描写や捜査、犯行の推理の一つひとつに、心が踊らされてしまいます。
ここがポイント
人間描写が凄く巧妙であり、謎に包まれた事実を読む者の興味を高めながら、次々に明らかにしていく様は見事というほかありません。
濃いミステリーが、堪能できる作品です。
5、『地を這う虫』
元刑事を主人公にした4編からなる短編集です。
今は別の職業に就いている、元刑事が、ふとした事件をきっかけに、刑事本能が目覚めてしまうのです。
しかし、結局は、周囲の人間模様の闇の中に、埋没してしまうのです。
ここがポイント
出過ぎた演出を意識的に排して、目の前の道を地道に生きていくしかなかったのです。
生きていくことの困難さが分かる作品です。
6、『照柿』上・下
合田雄一郎刑事シリーズの第二弾で、一人の人妻に心を奪われ、理性を失い、道を踏み外していく男二人の話です。
ここがポイント
男女間の執着心や嫉妬心が中心に描かれていて、狂い墜ちていく心情に圧倒されてしまいます。
作品全体から伝わる熱気は凄まじく、閉鎖された工場の炉の色と、そこから想定される照柿色が徐々に男の神経を蝕んでいきます。
緊張感や緊迫感に、痺れてしまう作品です。
7、『レディ・ジョーカー』上・中・下
合田雄一郎刑事シリーズの第三弾で、大手ビール会社を狙った、企業テロの話です。
多少のアレンジはありますが、グリコ森永事件をかなり忠実にプロットしていて、内部犯行説の解釈で描かれています。
実際の事件もこうだったのではないかと思わせるリアルさもあり、目が離せなくなるほどの怒涛の展開が見ものです。
ここがポイント
レディ・ジョーカーというタイトルの秀逸さに、納得してしまう作品です。
8、『李歐』
複雑な心情を抱えた青年が、一人の殺し屋と出会い、数奇な運命を辿る話です。
現実にはあり得ない、幻のような展開ですが、精緻な描写力に感動してしまいます。
ここがポイント
非常な裏社会と表の日常の社会、そして、矛盾と複雑さを抱えた主人公の心情が、丁寧すぎる位に描かれています。
壮大な男たちのロマンに、浸れる作品です。
9、『空海』
高村薫氏による空海の姿を綴った話です。
当時の人々にとって、宗教は何だったのか、そしてそれは、どう変貌していったのかが、分かりやすく解説されています。
カメラ映像の70点と共に、半分が紀行文で構成されています。
ここがポイント
宗教というものにどう向き合ったらいいのか、改めて考えさせられる作品です。
10、『太陽を曳く馬』上・下
合田雄一郎刑事シリーズの第四弾で、理由なき殺人事件の世情を踏まえ、宗教と真っ向から対峙する話です。
今までの合田シリーズとは少し趣が異なり、事件解決云々よりも、宗教学云々といった感じで、ストーリーは展開していきます。
宗教としての強度を孕んだオウム真理教と、もはや強度を持ち得なくなった伝統仏教の対比が描かれています。
ここがポイント
もはや小説の枠を超えている作品です。
11、『冷血』上・下
合田雄一郎刑事シリーズの第五弾で、2002年、クリスマス前夜、東京郊外で起こった医師一家殺人事件の話です。
序盤は犯行から逮捕されるまでを描いていて、中盤から終盤に至っては、犯人の取り調べという展開で、話は進んでいきます。
ここがポイント
検察に送るための詳細な取り調べの中で、動機や犯意の解明をしていくのですが、明らかにならず、不条理さを覚えます。
とにかく、圧倒されてしまう作品です。
まとめ
高村薫氏の作品はいかがでしたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
高村氏の言おうとすることが堪能できると思います。