エンターテインメントを描く、真藤順丈氏のおすすめの作品を10選ご紹介させていただきます。
学生時代は自主映画やウェブコンテンツを制作する創作集団を結成していました。
映画監督を志して映像関係の仕事に携わり、その傍らで小説の執筆も始めていました。
後に小説のみに専念するようになり、長短編合わせて10作ほどを各文学賞に投稿するも、ことごとく落選してしまいます。
真藤順丈おすすめ10選をご紹介~エンタメ小説の世界を描く~
30歳になり一念発起し、これでダメなら、小説家の道を諦めるつもりで、一か月に一作を応募して、その結果四作が文学書を受賞することとなります。
2008年に「地図男」という作品で念願の作家デビューを果し、ジャンルにとらわれることのない、幅広い作風で、人気を博し続けています。
そんな真藤順丈氏のおすすめの作品を10選ご紹介させていただきますので、お楽しみください。
《地図男》
関東地域地図帳を小脇に抱え、膨大な書き込みをしながら、街を彷徨う男の話です。
一体、男の目的は何なのか、そして地図に書き込まれた物語の話が語られていきます。
全く先が読めない展開と、独特な世界観が強烈なインパクトを与えてくれます。
ここがポイント
物語そのものをテーマにした面白い作品です。
《庵堂三兄弟の聖職》
ここがポイント
遺体から様々な製品(遺工品)を作り出す、庵堂家の三兄弟の話です。
跡継ぎの名匠であり、家族思いの長男の正太郎、家業に馴染めず、疎外感を感じてきた次男の久就、汚言症を持ち、衝動を抑えられない三男の毅巳。
遺体の加工の様子が生々しく描かれていますが、死者を冒瀆しているのではなく、愛する者の死を乗り越えるため、遺品を望む遺族の心を癒すためにしていることなのです。
普遍性のある家族愛が、味わえる作品です。
《東京ヴァンパイア・ファイナンス》
ここがポイント
超低金利で高額融資をする090金融のヴァンパイア・ファイナンスを営む、万城小夜の話です。
そんな彼女の顧客は、送りオオカミを夢見る男、性転換手術をしようとする女、振り込め詐欺グループへの復讐を目論む老人たち、ドラッグデザイナーから足を洗いたいと思う女等、普通ではない人たちばかりなのです。
4つの物語が入り乱れて、小夜を介して一本に繋がっていきます。
伏線もしっかり回収されていて、テンポよく読める作品です。
《RANK》
ここがポイント
増えすぎた人口を減少させるために、人間に順位を付け、最下位に落ちると処分される、近未来の話です。
低順位者に待っているのは、執行官による社会からの排除、しかし執行官の連続殺害事件を発端に秩序は揺らぎ始めていくのです。
対照的な二人の執行官を軸に話が展開し、次第に明かされていく強制執行の真の姿に思わず、驚愕してしまいます。
執筆当時、近未来とうたっていたものが、実現しうる状態まで、来ていると思うと何か、怖くなってしまいます。
《バイブルDX》
ここがポイント
世界最大級のベストセラーの「聖書」を超える雑誌を創刊するために、現代のキリスト候補を探す話です。
現代のキリストが起こす奇蹟をひたすらに取材をしていき、そのキリスト候補者たちの引き起こす出来事は、奇妙な話なのに全てが面白く、自然と引き込まれてしまいます。
前半と後半でかなり雰囲気が異なり、おなじ作品であるのに2通りの楽しみ方ができます。
面白いプロットと、独特な世界観のある作品です。
《畦と銃》
ミナギ村と呼ばれる農村を舞台に、見た目からは想像もできない、ハードボイルドなドラマが展開する話です。
ミナギ村で農地や林や牧場を崩壊させ、再生しようとする地元の人や、他からやってきた者たちの熾烈な駆け引きと争いが次から次へと続いていきます。
ここがポイント
とてもパワフルな文章でリズム感もあり、疾駆するスピードは爽快な気分にしてくれます。
ハードボイルドの傑作と言える作品です。
《墓頭(ボズ)》
双子の片割れの死体が埋まった瘤を頭に持つ、墓頭(ボズ)の話です。
周囲の人間を死に追いやる宿命を背負った、男の壮大な一代記が描かれていて、大河小説のようでありながらも、ミステリーやハードボイルドの要素も感じられます。
ここがポイント
グロさもヴァイオレンスさも感じ、決してハッピーエンドではないのですが、読み終わると胸が熱くなってしまいます。
衝撃の展開が何度も訪れる興奮の作品です。
《しるしなきもの》
日本一のヤクザの組織の長、早田を抹殺するために、その愛人の息子が復讐を企てる話です。
半陰陽の秘密を持つ主人公が、一族に流れる暴力の神話を絶ち、母の無念を叶えるためにのし上がっていきます。
ここがポイント
圧倒的なスピード感に、暴力と血に満ちた家族の思いとともに、自己や世界も内省的に描いていて、引き込まれてしまいます。
不思議とエンターテインメント性を感じる作品です。
《夜の淵をひと廻り》
ある街のある交番に勤務するシド巡査の周りでおきる事件の話です。
シド巡査はタガのはずれた詮索魔で、三度の飯よりも職務質問や巡回連絡が大好きな偏執症なのです。
シド巡査の手記に登場する犯罪者は様々なタイプがいて、その犯罪に至るまでの動機や環境なども丁寧に描かれていています。
ここがポイント
凄惨な事件が絡み、繋がっていく中で、涙あり、笑いありの濃厚さが味わえる作品です。
《宝島》
奪われた故郷を取り戻すために、少年少女が立ち上がる話です。
終戦直後の沖縄、島の英雄オンちゃんをリーダーにグスク、レイは米軍基地の物資を盗んで、島の人たちに配って生活を支えていました。
島人は自分たちの大切なものを守るために、土地に渦巻く怒りや悲しみと戦っていたのです。
ここがポイント
日米の犠牲にされた沖縄の憤りが、強く伝わってくる後半は胸が熱くなってしまいます。
熱い思いと愛おしい人間たちの魂の作品に間違いありません。
まとめ
真藤順丈氏の作品はいかがでしたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
新しい、発見があるかもしれません。