男たちの情熱を描く、佐々木譲氏のサスペンス作品10選をご紹介させていただきます。
佐々木氏は北海道夕張市に生まれ、高校を卒業してから広告関連の仕事に従事していた1979年に「鉄騎兵、跳んだ」という作品で文藝春秋「オール讀物新人賞」を受賞し、作家デビューを果たします。
作品の特徴としては社会派エンターテインメントで、国内外の情勢を取材した作品で広く知られています。
佐々木譲サスペンスおすすめの10選をご紹介~虚構作りの快感~
物語を書くことは騙りであり、嘘をつくのは楽しいし、書く上でのモチベーションに繋がっているとのことです。
虚実の境が分からない小説を書くということは、佐々木氏には快感のようです。
そんな佐々木譲氏の作品を刊行順に10選ご紹介させていただきますのでお楽しみください。
1、『夜にその名を呼べば』
東西のドイツを舞台に、企業の汚職隠蔽で罠にはめられた男の復讐劇の話です。
会社の不正輸出を隠すために、上司殺害の罪を着せられて、自分の命も狙われてしまう男。
ここがポイント
そして事件から5年後、舞台は北海道小樽、息もつかせぬ展開に引き込まれ、復讐のからくりが解明されていきます。
叙情感がタップリ味わえる作品です。
2、『ストックホルムの密使』上・下
太平洋戦争秘話の3部作の最終作であり、終戦前を描いた話です。
日本が敗戦濃厚になった時の終戦工作をめぐるものとして描かれています。
終戦に至るまでの間、無能な軍人、政治家が悲惨な戦争へと事態を悪化させたのか、それとも戦争という狂気が人心を狂わせ悲劇を増幅させたのか考えさせられます。
ここがポイント
ぶれずに生きる大切さがわかる作品です。
3、『総督と呼ばれた男』上・下
第二次世界大戦後のシンガポールを舞台にした、一人の日本人の波乱万丈の話です。
戦前・戦中のシンガポールの様子が良くわかり、日本軍の中国侵攻、真珠湾攻撃で揺れる様子を臨場感たっぷりに描いています。
その激動の時代に、日本人社会のボスの座をめぐり繰り広げられる争いは、読みごたえがあり、目が離せません。
ここがポイント
誰のため、何のための戦争だったのでしょうか。
改めて、決して忘れてはいけない戦争の恐ろしさを、思い知らされる作品です。
4、『鷲と虎』
1930年代の中国を舞台に、日本海軍96式艦上戦闘機搭乗員と、アメリカ傭兵パイロットや中国空軍兵との戦いを描いた話です。
武士として戦争に挑んだ日本人と、飛行機乗りとして中国の空軍に加わったアメリカ人との間に、何度も戦闘が繰り広げられていきます。
ここがポイント
憎み合いながらお互いに意識し合い、一対一の決闘に向かう展開は、まだ戦場が個人の名で語られる時代のロマンに溢れています。
空への憧憬と空中戦に対する心意気には、感動さえ覚える作品です。
5、『疾駆する夢』上・下
戦後の日本の自動車業界を舞台にした、一人の男の話です。
実際の自動車会社をモデルにしたような戦後の経済復興と、自動車産業の発展について描かれています。
ここがポイント
戦後のバラックの整備工場から、自社製の自動車を作り始め、そして、ルマン参戦、デザインなど革新しながら夢を追いかけていきます。
男たちの車作りにかける思いが、溢れている作品です。
6、『くろふね』
開国に向けてペリー率いる黒船が浦賀に来航した時に、日本人として初めて黒船に乗り込んだ中島三郎助の話です。
幕府側の視点で幕末を捉えていて、攘夷とか言っている連中のことをあまりよく思っていないことが伺えます。
時代の変動の最前線で、自分の見たことを信じて生き切った、三郎助の人生には、大いなる説得力が溢れています。
ここがポイント
歴史を違った角度から見れる作品です。
7、『天下城』上・下
武田軍に滅ぼされた後に、流浪の旅を経て、石積職人となった男の話です。
石積職人の技術を磨きながら信長に近づいていく過程には、ワクワクしてしまいます。
ここがポイント
超一流の技術があるから信長にもきちんと意見が言えるし、認めさせてることができたのです。
石積職人の波乱万丈な人生をドラマチックに描いている作品です。
8、『制服捜査』
札幌の刑事であった川久保が、道東の派出所に配置転換され、駐在さんとして事件を解決していく5編からなる連作短編集です。
田舎ならではの閉鎖性に、潜む闇を静かに抉り出すような展開で、物語は進んでいきます。
ここがポイント
身近に起こるかもしれない犯罪や集落の中での付き合い方、そしてその集落での裏のルール等が絡んできます。
底知れない緊張感が、味わえる作品です。
9、『笑う警官』
北海道警の婦人警官が殺され、元交際相手の警官に容疑者の疑いがかかる話です。
警察組織の腐敗とそれに挑む現場の警官たちを描いていて、チーム内の裏切り者を炙り出す様子には手に汗を握ってしまいます。
徐々に明らかになる真相、裏切り者、事象のの裏の裏をかく展開などのやり取りは実に面白く目が離せません。
ここがポイント
熱い気持ちを持って闘っている警官に、拍手を送りたくなる作品です。
10、『警察庁から来た男』
警察庁からキャリア監察官がやってきて、道警の闇を調査する話です。
警察と暴力団の癒着、そしてその癒着の裏には、過去に関わった囮捜査の情報漏れの真相が隠されていたのです。
ここがポイント
一見関連性のない事件と、警察組織の腐敗とかが結びついていく過程が、刑事と監察官それぞれの視点で語られています。
やはり、正義が勝つことは、嬉しくなってしまいます。
まとめ
佐々木譲氏の作品のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
警察シリーズは勿論面白いのですが、その他にも面白い作品がたくさんあります。
まだ読んでいない作品がありましたらこの機会に是非読んでみてください。