女性の描写に定評のある、松村比呂美氏のおすすめの作品を8選ご紹介いたします。
1999年「メッセージ」という作品が、第6回九州さが大衆文学賞の佳作に選ばれ、2001年には「暖かい殺意」という作品が第40回オール讀物推理小説新人賞の候補作に選ばれます。
その後も文学賞の候補に挙がったり、携帯サイトにて小説の連載を開始したりして、2005年「女たちの殺意」という作品で書籍デビューを果します。
松村比呂美おすすめ作品8選をご紹介~女性の心理を巧みに描く~
松村氏は子供の頃から物語を作っていたそうで、30代後半から、小説の投稿を開始し、コバルト短編小説新人賞で佳作に選ばれたのがきっかけで、小説家になることを決意したようです。
また、もっとも影響を受けた作家として、新津きよみ氏を挙げています。
そんな松村比呂美氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきますので、お楽しみください。
1、《女たちの殺意》
様々なテーマで、女性の殺意を描いている5編からなる短編集です。
それは日々の小さな出来事が少しずつ積み重なって、心の奥の方から段々と這い出して来るのです。
ここがポイント
どの話の主人公も言葉や行動で発散できなくて、そんな行為に走ってしまうのです。
うちは大丈夫と思っていても、いつ何時、こんなことになってしまうかもしれませんね。
2、《幸せのかたち》
中学時代の同級生が突然現れたことにより、平穏だった私生活が乱れていく話です。
ここがポイント
性格描写が巧みに描かれているので、登場する3人の主婦の輪郭がはっきりと伝わってきます。
主婦3人のそれぞれの幸せのかたち、それは、最初からそこにあったものだったり、全く違ったものになったり、虚構して消え去ったりと、主婦たちの明暗がはっきりと分かれていきます
ミステリー要素も散りばめられてるので、楽しめる作品です。
3、《ふたつの名前》
高齢者向けの結婚相談所で働く保奈美、平凡な家庭に育ち、仕事も順調、そんな彼女に時折、不安としか言いようのない発作が襲う話です。
ここがポイント
その原因は何なのか、保奈美が探りはじめた時、平穏な家庭がひた隠しにしてきた、悲しい事件が浮き上がってくるのです。
その事件とは、ふたつの名前とは、連鎖の恐ろしさを感じずにはいられない作品です。
4、《恨み忘れじ》
6編からなる、人間の執念が引き起こす心理ホラー短編集です。
ここがポイント
タイトルのごとく、復讐の念が詰まった話ばかりで、基本的にはやった方は忘れてしまいますが、やられた方はずっと心の中に静かに憎しみを蓄積させていたのです。
どの作品も恨まれて当然と言える人間が標的となっていて、恨む側も逆恨みではなく、誰でも持ち得るような感情の上での恨みなのです。
自己中心でデリカシーのない人、誰かに恨まれているかもしれませんね。
5、《終わらせ人》
生後間もなく自分を見捨てた、母親が亡くなり、仕方なく遺品整理に向かった先は、圧倒されるくらい大きな洋館だったのです。
母はそこで、何をしていたのか、という謎と共に、主人公の祈子自らにも、訳の分からない不思議な力が備わっていたのです。
ここがポイント
母から受け継いだ、「終わらせ人」という能力に戸惑いながらも、祈子はそれを受け入れていくのです。
続編を期待してしまう作品です。
6、《鈍色の家》
母の親友の郁子から多香子に届いた手紙には、恐るべき告白が記してあったのです。
何とそれは認知症の義母を、手にかけてしまったという衝撃の内容でした。
母が友達だと思っていた人は、本当に友達だったのだろうか。
先行きの見えない介護を続けながら、何を考えていたのだろうか。
ここがポイント
女同氏の複雑な愛情や嫉妬が、とてもリアルに描かれている作品です。
7、《キリコはお金持ちになりたいの》
お金への異常なまでの執着心を持っている、看護師の霧子があらゆる手法でお金を手に入れる話です。
あの手この手でお金を稼ぐだけではなく、犯罪に手を染め、友人を利用して保険金詐欺までやってしまいます。
霧子はピンチな状況でもうまく切り抜けることができて、冷静で頭が良く、腹黒い部分もあるけど、どこか憎めない不思議な女性なのです。
ここがポイント
お金持ちだという価値観は、人それぞれに違うものだと実感できる作品です。
8、《黒いシャッフル》
ヒモ状態の夫、引きこもりの兄、ストーカーと化した元夫に苦しめられている3人の女たちが、交換殺人を企てる話です。
計画がうまくいきそうに見えるのですが、綻びが出始めていくのです。
自分自身の人生に対しての葛藤と他人を羨む嫉妬心、そして良心に揺れる心の動きが絶妙に描かれています。
ここがポイント
因果応報という言葉がピッタリと当てはまる作品です。
まとめ
松村比呂美氏の作品のご紹介はお楽しみ頂けましたでしょうか。
女性の心の奥にある、闇をうまく描いていると思います。
まだ読んでいない作品がありましたら是非、この機会に読んでみてください。