人間臭さが味わえる、司馬遼太郎氏のおすすめの作品10選をご紹介させていただきます。
1923年生まれで、大坂外語学校を卒業しています。
太平洋戦争時は戦車隊の小隊長として従軍し、戦後は産経新聞の記者となり、在職中からエッセイや小説を書き始めています。
戦国期や幕末期から明治期に至るまでの日本と日本人をこよなく愛していて、多数の歴史小説を手掛けています。
発表する作品はロングセラーやベストセラーになっていて、まさに日本を代表する娯楽文学の巨人なのです。
司馬遼太郎おすすめ10選をご紹介~知恵よりも大事なのは覚悟~
作風としましては、膨大な資料に裏付けられた直接的な本筋とは無関係の余談を散りばめることで、全体を大きく見渡して、歴史的事象や、人物を様々な視点で描いています。
また、司馬氏の書籍が日本人に与えた影響は計り知れず、今の日本人が一般的に持っている武将や幕末の偉人たちのイメージは、司馬氏によって作り上げられたものが多いと言われています。(いわゆる司馬史観です。)
昔のことばかりではなく、晩年には「二十一世紀に生きる君たちへ」と題したメッセージも残しています。
そんな司馬遼太郎氏の厳選したおすすめの作品10選をご紹介いたしますので、どうぞお楽しみください。
1、『燃えよ剣 上・下』
剣に生きて、剣に死んでいった、新撰組副長の土方歳三を描いた話です。
新撰組の立ち上げ時から、鳥羽伏見、奥州戦線に至るまで、無双過ぎて、本当にこの人は死ぬのだろうかと思うくらいの、鬼の副長だったのです。
土方は志半ばで死んでいった、数々の同士や近藤、沖田の分まで生きて戦い、そして最後は疲れ果てて、呆気なく倒れてしまうのです。
ここがポイント
武士になることを望み、剣に生きて、最後まで新撰組として武士らしく戦った、一人の男の一生が詰まっています。
クールで冷徹なイメージの土方歳三が、より人間らしく描かれている作品です。
2、『関ケ原 上・中・下』
豊臣秀吉亡き後、天下分け目の関ヶ原の合戦に至るまでの経緯と、徳川家康と石田三成を中心とした謀略、知略の数々が、丁寧に描かれている話です。
巧妙に人を操り、天下を取った家康と、義を貫き敗れた三成、どちらのリーダーシップも学ぶべきところがあります。
この戦いは軍事的な争いというよりは、極めて政治的な、そしてドロドロした人間臭い性格の争いだったのです。
ここがポイント
誰を味方に取り込めば、或いは敵方の誰を切り崩して寝返りさせるという、謀略の成否が勝敗を分けたのです。
そしてそれに加えて、家康と三成の人柄と、人間的魅力も大きな要因だったのです。
決戦に挑む武将たちの人間像と、その盛衰が味わえる作品です。
3、『国盗り物語 1~4』
戦国時代に一介の油売りから身を起こし、美濃国の国主になった斎藤道三と、尾張国に生まれ破天荒な政略と軍略で天下布武を押し進めた、織田信長を描いた話です。
道三は己の財・知・勇をフルに活用して、美濃の国盗りという大仕事を行い、国盗りに成功するのですが、天下を盗るという事については挫折してしまうのです。
そしてその志は織田信長と明智光秀によって継承され、二人は本能寺の変で激突するに至るのです。
ここがポイント
道三の弟子として期待を受けた二人でしたが、信長の先進的な合理性に対して、光秀の保守的な行動原理は、水と油のように相容れないところがあり、自然と、どこかで衝突せざるを得ない運命だったのです。
この時代に生きた人間の心意気が、感じとれる作品です。
4、『竜馬がゆく1~8』
ここがポイント
幕末維新史上の奇蹟と言われる、坂本竜馬の一生を描いた話です。
主人公の竜馬は勿論のこと、吉田松陰、勝海舟、西郷吉之助などの関連人物が魅力的に描かれています。
坂本竜馬の凄いところは、尊王攘夷運動の最盛期にそれに乗じることをしないで、亀山社中という貿易結社を創業したことと、倒幕の機運が高まった時に、敢えて倒幕武力組だけに肩入れすることなく、大政奉還の道筋をつけたことなのです。
坂本竜馬がいなければ、現在のような日本は無かったのではないかと、つくづく思ってしまいます。
まさしく魂が震えてしまう作品です。
5、『新史 太閤記 上・下』
信長への献身に半生を注ぎ、その後は自分の能力を遺憾なく発揮して、天下統一という華々しい事業を行った豊臣秀吉の話です。
彼の人生そのものが、華々しく賑やかであり、周りの人物たちも、その陽気さになびいて、次第に彼に就いて行くのです。
人を殺めることを善とせず、人の心を動かすことを治世の術としたのです。
ここがポイント
言い換えれば、無駄に殺戮はしないで、敗戦の将も味方にし、それだけでなく、渋ることなく位や領土を与えたのです。
こういうことは、感情が支配する人間にはなかなかできない事なのです。
戦国時代の面白さと、人間臭さが味わえる作品です。
6、『花神 上・中・下』
田舎の医者の家に生まれながらも、官軍の総司令官になり、明治維新の渦中で非業の死を遂げた、日本の近代兵制を築いた村田蔵六(大村益次郎)の生涯を描いた話です。
ここがポイント
新撰組側、坂本龍馬側から見た幕末ではなく、長州側から見た幕末が描かれています。
蘭学者から軍事技術者として覚醒し、新政府でも自らの能力を発揮していきます。
合理的で機械のような冷静さは、一風変わった能力が故に、理解されず軋轢を生んでしまうのです。
人気の西郷隆盛とは正反対の存在ですが、大村益次郎がいなければ、維新政府はできていなかったと言われています。
明治新政府ができた理由が、なるほどと理解できる作品です。
7、『播磨灘物語 1~4』
豊臣秀吉の軍師として知られている、黒田官兵衛(如水・好高)の生涯を描いた話です。
播磨から起こり、豊臣秀吉に仕えた武将であり、黒田官兵衛を中心に物語は進んでいきます。
圧巻は備中、高松城の水攻めであり、城主、清水宗治の自害までの過程は、秀吉と毛利の和睦の裏で潔く美しいと感じてしまいます。
ここがポイント
そして明智光秀謀反による信長の突然の死、そこから毛利との講和、撤退、山崎の戦いと、息つく間もないクライマックスの展開にも興奮してしまいます。
歴史の奥深さ、底知れない魅力を改めて感じた作品です。
8、『この国のかたち 1~6』
司馬遼太郎氏がその持っている歴史知識を縦横無尽に駆使して、日本の国というものを捉え、考えさせてくれる話です。
バカな戦争を起こした日本が、数十年経ち、様変わりし、戦争のない平和な国へ発展したはずの日本。
ここがポイント
しかし、どこかがおかしい、そんな危惧を抱きながら、司馬氏はもう一度日本を振り返って綴っているのです。
歴史について独自の視点を持つ司馬氏が物事を考える際に、大事にしていることは、その始まりのかたちはどうだったのかという事なのです。
戦争に負けた時、何故日本がこのようになったのか、大変憂い、その思いを作家という立場で発信した作品です。
9、『坂の上の雲 1~8』
愛媛県松山出身の秋山兄弟と、正岡子規を主人公に日露戦争を舞台にした話です。
日露戦争は明治時代に日本の存在をかけて戦った総力戦であり、203高地、旅順攻撃、ロシアバルチック艦隊との日本海海戦など、壮絶な戦いであり、当時の日本の首脳陣が知恵を絞り、最初からどこで講話するかを外交を含めて戦ったのです。
しかし日本は、きわどい戦いでかろうじて勝利したことを国民に伝えず、国民もそれを知ろうとはしなかったのです。
そして国民は、日本軍の神秘的な強さを信仰するようになり、民俗的に痴呆化して、理性を失い、太平洋戦争に突入してしまうのです。
ここがポイント
史実を正確に理解していれば、先の無謀な戦争は、水際で防ぐことができたかもしれないのです。
まさしく先人の偉業に、脱帽してしまう作品です。
10、『二十一世紀に生きる君たちへ』
司馬遼太郎氏から、二十一世紀を生きるこどもたちへの、温かくも力強いエールが綴られています。
常に晴れ上がった空のように高々とした心を持ち、ずっしりとした逞しい足取りで、大地を踏みしめ、歩くように真直ぐに心を射抜く魂のメッセージが綴られています。
簡素なのに奥深い言葉で書かれたメッセージは、子どもたちだけでなく、大人の心にもずっしりと響いてきます。
ここがポイント
先人に敬意を払い、自然の営みに感謝し、謙虚にして、逞しく生きていくことの大切さを教えてくれています。
座右の書として、何度も読み返したい作品です。
まとめ
司馬遼太郎氏の作品のご紹介は、お楽しみいただけましたでしょうか。
歴史小説の大家としての作品は、ご満足いただけたかと思います。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。