女性の怖さが味わえる、明野照葉氏のおすすめの作品10選をご紹介させていただきます。
小説を書く上で気を付けていることは、その小説の主人公の職業が同じものにならないよう工夫しているとのことです。
また、中身的にはユーモアを含んだり、女性の持つダークサイド的な一面も、作品の中で表現したいとのことです。
明野照葉おすすめ10選をご紹介~女性の心理と狂気を描く~
大学卒業後、会社勤めを経て1998年に「雨女」という作品で第37回オール讀物推理小説新人賞を受賞して、作家デビューを果たします。
どんな作風であっても「今現在と寄り添っていたい」ということを信条とし、ペンネームの明野照葉という名前もパワーのある明るい名前を付けたい思いから、明るい野、照る葉で決めたそうです。
そんな明野照葉氏のおすすめ作品を刊行順に10選ご紹介させていただきますので、どうぞお楽しみください。
1、『輪廻』
有名な江戸時代の怪談を下敷きにした、時枝、香苗、真穂という母子3代の因縁物語です。
この作品の中で繰り広げられる嫁いびりは、とてもひどく、迫力感があり、恐ろしさが伝わってきます。
ここがポイント
超常現象を絡めて、家庭という逃れられない檻の中で行われる、女の張り合いというものはかなり恐ろしく、しかも相手が家族ならば、なおさら逃げきることもできないのです。
出口のない、トンネルのような話が綴られた、怖い作品です。
2、『憑流』
旧家に嫁いだ苑香は才色兼備であり、苑香が来てから嫁ぎ先は隆盛を極めていくのですが、しかしながらその一方で、彼女を怪しむものには、次々と不幸がふりかかっていくという話です。
ここがポイント
そしてついにその旧家にも大惨事が襲ってきてしまい、その結果、苑香の出生の秘密、過去の家族との関わりが露見されていくのです。
自分にとって邪魔なものは徹底的に排除していくという強い女性の執念が、これでもかというほどに描かれています。
真に恐怖感が味わえる、本格ホラー作品です。
3、『女神』
女神のような女、沙和子に憧れた、同僚の真澄は彼女を観察し始めるのですが、彼女には隠された謎があったという話です。
ここがポイント
想像を絶する沙和子の秘密の過去が、明らかになっていく過程に、目が離せなくなります。
正常と異常の境目はどこにあるのか、自分のことや周りの人は正常といえるのか、様々な疑問が浮かんできます。
沙和子のような思考もありだなと、思ってしまう作品です。
4、『汝の名』
容姿端麗で才色兼備の姉の塔子と、地味で汎用な妹の久恵の愛憎関係を描いた話です。
ここがポイント
二人は同居していて、勿論「主従関係」は我の強い塔子が久恵を支配しているのですが、あることがきっかけになり、立場が逆転してしまうのです。
強いて言えば塔子はイヤな女で久恵は怖い女、女の醜い部分をこれでもかというほど、見せつけられてしまいます。
女性の怖さを再認識させてくれる、恐ろしい作品です。
5、『25時のイヴたち』
39歳の主婦と、36歳のキャリアウーマン、幸せそうに見える二人には、人に言えない秘密があったのです。
彼女達二人は闇サイトで知り合い、世間に小さなひび割れを作ろうと、周囲に嫌がらせを仕掛けていくのです。
ここがポイント
些細なことで、友情は憎悪に変化していき、共感と反感の狭間で揺らぎながら、女の怖さが浮き彫りにされていきます。
常軌を逸した女の怖さというものが、分かる作品です。
6、『澪つくし』
哀しみと恐怖に溢れる8編を収録した短編集になります。
あの世とこの世、死者と生者の境界は眼に見えないけれど、身近にあることを感じさせてくれるのです。
ここがポイント
そして何かのはずみで、その境界に踏み込んでしまった人たちの悲しさが描かれています。
勿論、恐怖は感じますが、何か懐かしさに似た不思議な感覚になってしまう作品です。
7、『家族トランプ』
結婚を両親から急かされている実家暮らしの33歳の風見窓子に、47歳のやり手上司の有磯潮美が声を掛けるとこらから始まる話です。
ここがポイント
潮美に誘われ窓子は、潮美の実家の食堂「磯屋」に入りびたるようになり、次第に窓子の日常は劇的に変化していくのです。
家族をトランプに例えたり、打算で結婚相手を選んでいるのではないかいう違和感もあったりしますが、窓子が面白くて温かい人たちの仲間になりたいと思うのは、ごく自然の成り行きだったのです。
明野氏には珍しく、不思議な心地よさが味わえる作品です。
8、『契約』
34歳の牧岡南欧子が、新しい人生を求めて仕事の契約を結んだことから始まる、暗闇の世界の話です。
ここがポイント
今までの荒んだ生活が一変したかのように見えるますが、やはりうまい話には裏があり、南欧子は罠にはまってしまうのです。
過去の出来事を忘れた人と、どうにも忘れられない人の異常なまでの執着心に慄いてしまいます。
覚えていないことが、一番罪深く、人を傷つけてしまうことだってあるのです。
9、『冷ややかな肌』
外食産業で活躍する女上司の秘密を、出向させられた独身女性二人が暴いていく話になります。
働く女性の内面が緻密に描かれていて、バリバリ仕事をしたいのに、できない辛さが伝わってきます。
ここがポイント
また人を肩書や経歴で判断する怖さとか、様々な支配の仕組みがあることにも驚きを隠せません。
洗脳の恐ろしさのようなものが、実感でき、少しゾクッとしてしまう作品です。
10、『その妻』
専業主婦を夢見る妻、聡乃と甲斐性はないが優しい夫の融也、そして余命わずかな女性デザイナー、モナミの三人を中心にストーリーが展開していく話です。
社会に適合していない夫と、そんな夫に文句も言えない貞淑な妻、その静かな日常に他の女が絡んできて、夫婦の静かな生活が壊れていってしまうのです。
ここがポイント
そして夫の思いがけない行動によって、妻に狂気と殺意が生じていくのです。
登場人物それぞれの身勝手さが、印象深く描かれていて、明野氏の巧みな心理描写にも感服してしまう作品です。
まとめ
女性の心理と狂気を巧みに描く、明野照葉氏の作品のご紹介はお楽しみいただけましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
明野ワールドにハマってしまうと思います。