若手、推理小説家に多大な影響を与えた、北村薫氏の厳選した12作品をご紹介させていただきます。
北村氏は若い女性を主人公にしたミステリー等で人気がある作家のひとりです。
また、小説を書くことよりもむしろ読むことを大切に思っているとのことで、小説は書くもバトルですが、読むもまたバトルなのだそうです。
そんなわけで優れた読み手としての見識も買われていて、各文学賞の選考委員なども務めています。
北村薫おすすめ作品12選をご紹介~日常の謎に迫る名手~
北村氏は大学卒業後、高校の国語教師をしながら覆面作家として「空飛ぶ馬」という作品でデビューを果たします。
その後も各文学賞を受賞するなど、推理作家業界の重鎮の一人として、活躍し続けています。
北村氏の作品は基本的に「日常の謎」を描くことであり、その優しく温かな世界観は、読者を虜にしてしまいます。
そんな北村氏のおすすめ作品12選をご紹介させていただきますので、お楽しみ下さい。
1、『覆面作家は二人いる』
覆面作家シリーズの第1弾であり、大富豪令嬢の主人公(覆面作家)が、編集者と一緒に事件の謎を解いていく話です。
ここがポイント
3編からなる中編でスラスラ読めるライト・ミステリーで、登場人物の設定もかなり面白くなっています。
コミカルな展開とユーモアのある会話を、かなり楽しむことができます。
あっさりと読めるのに、ホッとする作品です。
2、『空飛ぶ馬』
円紫さんシリーズ第1弾であり。噺家である春桜亭円紫師匠と私による、6編からなる短編集で、日常的な謎を解き明かしていく話がつづられています。
ここがポイント
知性的な文章構成で、女子大生の日常に視点をあてていて、円紫師匠との掛け合いも面白く、楽しめます。
一つ一つの作品が丁寧に描かれているので、心地よさに満たされてしまいます。
上品で気持ちまでが優しくなる作品です。
3、『スキップ』
17歳の女子高生がうたた寝から目覚めたら、42歳の母親になっていたという何とも不思議な話です。
ここがポイント
何と25年先にタイムスリップしてしまった主人公が、前向きに生きていく姿に感動さえ覚えてしまいます。
残酷な運命に心が折れそうになりながらも、自尊心を失わない主人公には拍手を送りたくなります。
読者の心をとらえて離さない作品です。
4、『ターン』
不慮の事故により、毎日が繰り返す世界に陥ってしまう奇妙な話です。
その世界には人の居た気配はあるのに誰もいなく、鳥の声も虫の声も聞こえない状況なのです。
そしてそんな繰り返しの毎日から、150日が過ぎたあたりに運命を変える1本の電話がかかってくるのです。
ここがポイント
物語の終盤に差し掛かるころには、ハラハラする展開になり、目が離すことができません。
頑張って、生きる力が湧いてきそうな、そんな作品です。
5、『月の砂漠をさばさばと』
童話のようなタッチで、母と娘の日常を描いている12の掌編です。
親子でありながら、友達のような仲良しの日常として、楽しく過ごすような雰囲気に浸ることが出来ます。
ここがポイント
母子二人の向き合い方がとても素敵で、時に温かく時に切なく、心に迫ってくるものを感じてしまいます。
いろんなことが感じられる、純粋な気持ちなってしまう作品です。
6、『盤上の敵』
猟銃を持った殺人犯から、人質になった妻を救い出そうとする夫の話です。
思いもよらない展開に翻弄されながらも、その展開にどんどん引き込まれてしまいます。
ここがポイント
一見無関係に思われる二つの物語が、一つに収束されていく様には、流石に気持ちが昂ぶり、興奮してしまいます。
北村氏にしては異色の作品で、不思議な読後感に浸ることができます。
7、『リセット』
戦争によって引き裂かれた愛を、輪廻・転生によって、時代を超えて成就に導くという少しSFチックな話です。
序盤は戦時中の話が淡々と展開していき、終盤にかけての怒涛の展開の筆運びはお見事の一言につきます。
ここがポイント
戦争とか事故とかが描かれていますが、感傷的になることも少なく、ゆったりとした時の流れを感じることができます。
幸せな気分にしてくれる作品です。
8、『街の灯』
ベッキーさんシリーズ第1弾であり、昭和7年を舞台にした、上流階級のお嬢様と、雇われ女性運転手が織りなす三つの話が綴られています。
魅力的なキャラクター設定で堅苦しくなく、昭和初期の情景が手に取るように分かります。
日常の謎は女性運転手がヒントを出して、お嬢様が謎を解いていくという流れで展開していきます。
ここがポイント
穏やかな時代背景と舞台にほっこりできて、優しい気持ちに浸ることができます。
続編が読みたくなる作品です。
9、『夜の蝉』
円紫さんシリーズ第2弾であり、人間的成長をテーマにした3作が綴られています。
ここがポイント
謎解きの楽しさは勿論のこと、日常のほんの小さな出来事に対しても事細かに描かれています。
かなり前の作品ですが、全く古さを感じなく、読んでいると、何故か心地よくなってしまいます。
余韻が残る、味わい深い作品です。
10、『ひとがた流し』
幼馴染である親友、3人のそれぞれの視点で描かれた日常の話です。
決して派手でもなく、劇的な展開もありませんが、深みがある日常が描かれています。
ここがポイント
お互いを理解しあい、適切な距離感を保って付き合っていくことの大切さが分かります。
人と人とのつながりというものが、大切だと思える作品です。
11、『鷺と雪』
ベッキーさんシリーズの第3弾であり、昭和9年から11年までの出来事3編が綴られています。
勿論、ごく普通の日常に絡んだミステリーであり、二人のコンビが謎を解き明かしていく展開になります。
ここがポイント
ベッキーさんの鋭い観察力と、推理が冴えわたり、また文章が流れるようで美しく感じでしまいます。
第141回直木賞受賞作品であり、見逃せない作品です。
12、『八月の六日間』
雑誌の副編集長である40歳を目前にした女性が、登山の魅力に目覚めてしまう話です。
ここがポイント
豊かで時には厳しい自然と触れ合いながら、自分と向き合う様子がしっかりと描かれています。
登山という非日常の中で、楽しい出会いもあれば困難もあるのですが、それが終わると、また、いつもの日常に戻っていくのです。
癒される気持ちにしてくれる作品です。
まとめ
北村薫氏の心にしみる作品のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、この機会に是非読んでみてください。
きっとあなたの心を温めてくれると思います。