毅然と生きた日本人像をノンフィクションとして描く、門田隆将氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。
高知県生まれで、大学卒業後、新潮社に入社し、週刊新潮編集部で、政治・経済・歴史・事件など、あらゆる分野で、スクープをものにしたのです。
特に神戸で起きた、神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇事件)では、被害者遺族の手記を発掘するなどして、少年法改正に大きな役割を果たしています。
門田隆将おすすめ作品8選をご紹介~本当の人間を描きだしていく~
2008年に新潮社を退社し、フリーのジャーナリスト、ノンフィクション作家として、独立を果します。
同年7月には、光市母子殺害事件遺族の本村洋氏を描いた、「何故君は絶望と闘えたのか 本村洋の3300日」を刊行します。
そして同作は、テレビドラマ化もされ、2010年度、文化庁芸術祭賞のドラマ部門の大賞を受賞しています。
実際に起きた、戦争や事件、事故の真実に迫るノンフィクションを次々に執筆して、人間を描きだしているのです。
そんな門田隆将氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきますので、お楽しみください。
1、『なぜ君は絶望と闘えたのかー本村洋の3300日』
光市母子殺害事件の被害者遺族である、本村洋さんについて書かれた、ノンフィクションになります。
1999年4月、山口県光市で、23歳の主婦と生後11ヶ月の幼児が、18歳の少年Fに惨殺されたのです。
容疑者は少年法の保護を受ける18歳の少年Fであり、第一審は無期懲役の判決であったが、遺族の本村さんにしてみれば、犯人の権利は二重三重に守られている一方で、被害者の声は無視される現実だったのです。
さらに、これほど残忍な重大犯罪を犯しながらも、過去の判例に縛られた司法の結果に疑問をいだくようになったのです。
ここがポイント
そして、様々な人たちが本村さんを支えていき、世の中が動き、法律や制度が変わっていったのです。
日本の司法を大変革させることになる、知られざる人間ドラマがこの事件の影にあったのです。
まさしく、山が動いたのです。
2、『神宮の奇跡』
昭和33年に東都大学リーグ1部で逆転優勝した、学習院大学野球部の奇跡をルポルタージュ風にまとめた話です。
ここがポイント
有名高校球児が在席しているわけでもなく、野球に取り組む環境も他校ほど整備されていない中、何故このような偉業が達成できたのでしょうか。
優勝した軌跡を監督、選手それぞれの人生を丹念な取材で、描きながら、優勝の数日後に発表された皇太子殿下の婚約発表とも併せて語られています。
コツコツと苦難を乗り越えていく日本人の逞しさが描かれていて、特にPL学園野球部の祖である井本俊英氏の生き様は、すばらしいの一言に尽きます。
それぞれの人たちが諦めることなく、粘り強く目標に向き合い、思いを実現させた過程に感動してしまう作品です。
3、『この命、義に捧ぐ 台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』
台湾、金門島の戦いにおける勝利に貢献した、元日本陸軍北支那方面軍司令官、根本博中将の足跡を記したノンフィクションです。
1945年、日本は戦争に敗れ、降伏するのですが、根本中将は中国国民党党首、蒋介石氏の恩義を受け、4万人の慰留民と30万人を超える日本兵を無事に、日本へ帰国させることが出来たのです。
その4年後、この恩義に報いるため、中華民国の統治下にあった台湾へ渡り、金門島における戦いの指揮を行い、中共政府の中国人民解放軍を撃破するのです。
その結果中共政府は、台湾奪取による統一を断念せざるを得なくなり、今日にいたる台湾の存立が決定的となったのです。
ここがポイント
現代の日本人と同様の物差しで、計ること自体難しいのですが、義を大事にする侍魂というものは、いつの時代も持ち続けている人間がいることに、普遍の価値観を覚えてしまいます。
4、『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』
東日本大震災によって引き起こされた、福島第一原発事故を当時の関係者の証言を基に、書かれたノンフィクションです。
10mを超える津波で、全電源喪失などの福島第一原子力発電所の大事故で、その立地の経緯から事故が発生し、格納容器爆発による大量の放射能漏れと、拡散という最悪の事故を防いだ、吉田所長と福島・浜通りの原発職員、自衛隊員等、命を賭けた収束対応の様子が克明に記されています。
官邸とのやり取りや、マスコミの報道のあり方等、緊急時に起きる様々なトラブルも、手に取るように分かる臨場感に溢れていて、原発という馴染みがない分野でも、大変分かり易く解説されています。
ここがポイント
本当にあの人たちがいなかったら、間違いなく日本は分断されていたと思います。
人間とは、そして使命とは何かを、考えさせられる作品です。
5、『狼の牙を折れ:史上最大の爆破テロに挑んだ警視庁公安部』
1974年8月30日に起きた、三菱重工本社爆破事件の発生から、犯人逮捕までを描いたノンフィクションです。
団塊の世代が、青春時代に起こした暴挙と、それを糺した正義の実力を目の当たりに感じ、つくづく平和な今をありがたく思ってしまいます。
共産主義、社会主義の熱に浮かれ、身勝手にも、無防備な人々の生命を奪う行為が横行した時代だったのです。
ここがポイント
富裕層の卑怯な若者が、爆弾テロを行っていたことを思い出して、哀しくてやるせない思いになりますが、同世代の恵まれない境遇で育った勇猛果敢な若者が、彼らを許すことなく捕らえたことも知り、感動しきりです。
公安刑事たちの執念が、ひしひしと伝わってくる、胸が熱くなる作品です。
6、『慟哭の海峡』
アンパンマンの作者である、やなせたかしさんの実弟で、駆逐艦、呉竹の水測員として、バシー海峡で戦死された柳瀬千尋さん、そして同時期にバシー海峡で、九死に一生を得た中嶋秀次さん、お二人の生き様を描いたドキュメンタリーです。
凄惨な戦場描写もさることながら、大正生まれの若者たちがいかに、戦争に向き合い、出征していったのかを知ることができます。
ここがポイント
柳瀬千尋さんの短い大学生活を通じて、当時の世情、そして決して軍国一辺倒でも戦場への恐怖だけでもない、何とも言えない空気感を追体験することができます。
先人たちが見た光景を想像し、絶句してしまう作品です。
7、『日本、遥かなり エルトゥールルの「奇跡」と邦人救出の「迷走」』
海外で有事が起きた際、現地にいる日本人を救出することが出来ない日本国、自国民の生命を他国に委ねる国の日本が、イランイラク戦争、湾岸戦争、イエメン内戦、リビア動乱等の実際の日本政府の対応を基に描かれている話です。
前半部分は、トルコとの歴史的な関わりのあるエルトゥールル号とイランイラク戦争時における邦人救出についてで、後半に至っては、ここ30年で起きた様々な場面で、救出された邦人のエピソードが綴られています。
ここがポイント
トルコ人の友情に感謝すると共に、国民の生命を救う事の出来ない、日本という情けない国が、恥ずかしく、憲法を守るために国民の生命を見捨てることを何とも思わないのは何故なのか理解できなくなります。
果たしてこの状況が変わる日は来るのだろうかと思ってしまいます。
安保法制で議論していたのは一体何だったのでしょうか。
8、『疫病2020』
新型コロナウイルス(中国、武漢発症ウイルス)対応を通じ、我が国の政官の問題が改めて、浮き彫りになった話です。
いち早く中国からの入国制限を行い、ITを用いたマスクの在庫管理を行い、国民の信頼を得た台湾に対し、我が国の厚労省の見通しの甘さ、後手に回った入国制限で、コロナ対策に失敗した日本を対比させながら、国としての危機管理の重要性を訴えています。
ここがポイント
杜撰な初動対応にも関わらず、感染者の爆発を抑え込んだ日本人の道徳心の高さと、医療関係者、そしてそれに関わる人たちの献身的な行動を誇りに思いつつも、有事の際の政府、行政の対応に不安を感じてしまいます。
不作為の罪をリアリティ感タップリに描いた作品です。
まとめ
門田隆将氏の作品のご紹介は、お楽しみいただけましたでしょうか。
数々のノンフィクション作品の訴える声は、あなたの胸に届いたと思いいます。
まだ、読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。
たくさんの歴史の中にある真実を実感できると思います。