色褪せない描写の夏樹静子氏のおすすめ作品8選をご紹介させていただきます。
大学在学中に「すれ違った死」という作品が江戸川乱歩賞候補となり、それがキッカケでNHK総合テレビの推理クイズ番組「私だけが知っている」のレギュラーライターに抜擢されます。
その後、短編や中編を発表し、1961年秋に二木悦子氏や戸川昌子氏らと女流推理小説作家の会「霧の会」を結成し、名実ともに女流作家の仲間入りを果たします。
夏樹静子おすすめ作品8選をご紹介~繊細な心理描写で魅了する~
大学卒業後、すぐに結婚し、執筆のことなど忘れたかのように、主婦業に専念したのですが、子供が生まれ、母と子のあり方を書いてみたいという衝動に駆られて、「天使が消えていく」という作品を執筆します。
そして1970年にこの「天使が消えていく」作品で本格的に作家デビューを果します。
日本女性推理作家の草分け的存在であり、「ミステリーの女王」と称されていましたが、2016年3月に77歳でその生涯を閉じます。
そんな夏樹静子氏のおすすめ作品8選をご紹介いたしますので、お楽しみください。
『見知らぬわが子』
女性心理を鋭く描いた、夏樹氏の初期の7編からなる短編集です。
1969年から70年初期に発表されたもので、一般家庭に固定電話が普及し始めた時期であるので、時代を反映する描写が多く昭和の時代を懐かしむことができます。
ここがポイント
しかし、どの作品も作者の持てる力を存分に注ぎ込んだ熱気をはらんでいて、読者の先入観を裏切るトリックとサプライズに圧倒されてしまいます。
現在読んでも全く色褪せていない作品です。
『二人の夫をもつ女』
ここがポイント
こちらの作品も秀逸なトリックと納得の心理描写が冴えわたる8編からなる短編集です。
被害者や加害者など事件に関わった女性の心情が細やかに描かれているのですが、共感しかねる女性ばかりなのです。
ネガティブで心配性なくせに、慎重性に欠けていたり、戦略が甘かったりとかで、浅はかさが目立ってしまうのです。
短編集とは思えない昭和の香りがする濃密な作品です。
『Wの悲劇』
薬品会社の会長が、一族が別荘に集まった正月に刺殺されてしまった話です。
何と殺したのは、会長の姪孫で誰からも愛されていた摩子だったのです。
一族が総がかりで、犯人の摩子の犯行を隠蔽するのですが、警察に味方する裏切り者が出てくるのです。
ここがポイント
倒叙ミステリーなので、被害者と加害者、動機や殺害方法は序盤で明かされるのですが、驚愕のどんでん返しが待っていたのです。
オーソドックスなミステリーに新鮮さを感じる作品です。
『わが郷愁のマリアンヌ 上・下』
貿易会社、常務の倉内優二が、イギリスの取引先の陶磁器メーカーの女性オーナー社長のマリアンヌに、入れあげていく話です。
そんな中、彼女の会社のマネージャーの死により、彼女の秘められた過去が浮かびあがってくるのです。
事件の全貌が明らかになった時、マリアンヌを待ち受けるものは、そして倉内はどうなってしまうのか。
ここがポイント
ミステリーとしてのカテゴリーだけでなく、小説本来の楽しみも味わえる作品です。
『そして誰かいなくなった』
クルーザーに乗船した7人の男女が1人ずつ殺されていく話で、アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」のオマージュです。
ここがポイント
犠牲者が増えていくにつれ、緊迫感も高くなり、サスペンス要素も同様に高くなっていきます。
実際にあった大事件をモデルにした背景と、思わず騙されてしまうトリックの数々など、終始楽しめます。
最後に秀逸なタイトルの意味がわかる作品です。
『東京駅で消えた』
東京駅で消息を絶った人たちの一見して、繋がりのない三つの殺人事件の話です。
二つの事件の陰に隠されていたもう一つの事件は、建築業界の裏で起こっていた何かと関係はあるのだろうか。
東京駅の知られざる部屋、倉庫、通路などが鍵を握っているのでしょうか。
ここがポイント
東京駅という巨大な建物が醸し出す、秘密に満ち溢れた雰囲気に飲み込まれてしまいそうな作品です。
『乗り遅れた女』
意外な結末に翻弄される身近で緻密な6編からなる短編集です。
いつもながらの登場人物の心理描写が本当にうまく描かれていて、流石に夏樹氏の筆力に圧倒されてしまいます。
ここがポイント
身近な舞台で起きるちょっとした悪意が引き金になって、犯罪が起きてしまうのです。
かなり前の作品ですが古臭い感じが全くしなく、シンプルで読みやすくなっています。
人間味のある作品が綴らていて、しばらくその余韻に浸ってしまいます。
『てのひらのメモ』
喘息の子供を家に残したまま仕事に出かけ、死なせてしまった母親が裁判にかけられる話です。
ここがポイント
裁判員制度をリアルに描いたリーガルサスペンスです。
どのように裁判が進行して、何を基準として、どういうポイントで判断して、量刑を決定するのか、一般人では分からないことを同じように一般人の裁判員を通して描かれています。
果たして自分が裁判員に選ばれてしまったら、どんな判断を下すのだろうかと思います。
人を裁くことの難しさが痛感できる作品です。
まとめ
夏樹静子氏の作品はいかがでしたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
ミステリーの原点に浸ってみてはいかがでしょうか。