じんわりと心に響く描写で魅了する、三浦しをん氏のおすすめの作品12選をご紹介させていただきます。
三浦氏は小さい頃から読書が好きだったようで、気に入った作品は何度も繰り返して読んでいたそうです。
小説を書く上で心掛けていることは、人の善良な部分、特に希望や明るい面を全面に描いていきたいとのことです。
作風としては家族や、一つの仕事や物事に真剣に取り組んでいる人を描いたり、恐ろしいこと、悲しいことの側面を描いている作品が多くなっています。
三浦しをんおすすめ12選をご紹介~巧みな文章世界に浸る~
2000年4月に自らの就職活動の経験をもとにした、「格闘する者に〇」という作品で作家デビューを果たします。
その後は次々にヒット作を連発し、20代の若さながら「まほろ駅前多田便利軒」という作品で2006年上半期の直木賞を受賞しています。
最近では彼女の功績が認められて、小説各賞の選考委員も務めています。
そんな三浦しをん氏のおすすめの作品を刊行順に、12選ご紹介させていただきますのでお楽しみください。
1、《格闘する者に〇》
就活に励む主人公の可南子と、進路に悩む弟の旅人の心境の変化が、巧みに描かれている話です。
ここがオススメ
これから進んでいこうとする社会の現実が垣間見れて、理想との違いに幻滅したりする様子が、興味深く描かれています。
自由で好きなことをして生きているように見えて、家族間の微妙な空気を読み取り、芯が通っている可南子にとても共感してしまいます。
文章に軽々しさは全く感じられなくて、全ての登場人物に好感が持てます。
これがデビュー作とは脱帽です。
2、《私が語りはじめた彼は》
大学教授の村川融をめぐる、女、男、妻、息子それぞれの人間模様を描いた6編からなる連作短編集です。
話の核には必ず村川教授が見え隠れしますが、その実態がなかなか掴めなく、やきもきしてしまいます。
ここがオススメ
一人の人間の人生が本人の知らないところで、どれほどまでに他人の人生に影響を及ぼしているのかということが、分かります。
章が進むにつれて様々な謎が絡み合い、戸惑ってしまいますが、知らず知らずのうちに、引き込まれてしまう妖しい魅力の作品です。
3、《まほろ駅前多田便利軒》
便利屋に舞い込んでくる様々な依頼をこなしていく過程の中で、主要登場人物である多田と行天の内面が見えてくる話です。
舞台は東京のはずれに位置する”まほろ市″であり、この二人の空気感がとても心地良く、まるで漫画のような掛け合いや出来事に微笑んでしまいます。
ここがオススメ
破天荒な行天の懐の深さと、地道で正統派の多田にとても引き込まれてしまいます。
じんわりと胸にしみてくる作品です。
4、《風が強く吹いている》
箱根駅伝への出場という目標に向かって、竹青荘に住む寄せ集め集団が挑む話です。
10人それぞれの葛藤や想いが胸を熱くし、思っていた以上の青春を謳歌している様子が描かれています。
ここがオススメ
個性的な面々が同じ目標に向かっていく絆と信頼感、そしてひたむきな姿に、何度も目頭が熱くなってしまいます。
年始恒例の箱根駅伝の見方が、少し変わるかもしれません。
5、《きみはポラリス》
11作品が収録された、最強の恋愛小説短編集です。
恋愛がメインの短編集ですが、ミステリーやコメディ、純文学風など、なかなかバラエティに富んでいます。
切ない感情を押し出しているような表現ではないので、さら-っと読むことが出来ます。。
ここがオススメ
普段は気付かずにいる、何気ない日常の幸せを指示してくれるような感じで楽しめる作品です。
6、《仏果を得ず》
文楽の義太夫を極めることを目指す、若手大夫の奮闘を描いた青春小説です。
文楽の世界で義大夫である健が恋、芸を通して成長していく様が描かれています。
古典芸能の知識がなくても、とても読みやすく、楽しみながら文楽の世界にどっぷりと浸ることができます。
ここがオススメ
若者には敬遠されがちな、古典芸能との距離を見事に縮めてくれる粋な作品です。
7、《光》
光あふれる美しい島の描写から始まる話、そしてそれとは真逆の人間の深い闇を描いた話です。
圧倒的な自然災害の力と、その中で体験する様々な人の暴力、その体験がその後の人生にそれぞれ大きく関わっていくのです。
同じ体験をしているのに、その後の生き方が全く違ったものになってしまいます。
ここがオススメ
結局、人間は自分を守るためなら、何でもしてしまう生き物かもしれません。
8、《神去なあなあ日常》
都会の青年が携帯も通じない田舎の「神去村」での山仕事体験を、彼自身の目線で描いた話です。
林業について、大変丁寧に取材されていて、田舎の良さと、閉鎖的な環境を圧倒的な世界観で表現しています。
神去村での生活は自然で無理がなく、楽しく生きる様子がが伝わってきて、今まで知らなかった山仕事の様子も伺うことができます。
ここがオススメ
幸せな気持ちにしてくれる作品です。
9、《天国旅行》
心中をテーマにした7編からなる短編集であり、それぞれにテイストは異なりますが、ヒヤッとする話が多く描かれています。
どの話の世界観も儚く美しい印象で、どんでん返しあり、温かい気持ちになる話あり、ユーモアがある話等かなり楽しむことができます。
ここがオススメ
心中がテーマの割には読後感はそれほど暗くなく、目の前に迫ってくるような描写に、圧倒されてしまう作品です。
10、《木暮荘物語》
木暮荘に住む独特な個性を持った人や、どこにでもいそうな人々を描いた7編からなる連作短編集です。
各章の主人公それぞれが、性に悩みながら逞しく生きている様は、イヤらしさを通り過ぎて、笑いを誘ってしまいます。
ここがオススメ
人と関わり、悩みながらも生きていく人たちの応援歌のような作品です。
11、《舟を編む》
ここがオススメ
辞書つくりを巡って紡がれる人間関係と、言葉の奥ゆかしさを感じてしまう話です。
多くの人が知りえない辞書を作り上げる過程が、丁寧に描かれていて、さらに随所に人間描写や恋愛描写もあるので、飽きることなく楽しむことができます。
辞書は言葉の海を渡る舟、その海を渡るにふさわしい舟を編む、つまり辞書の編集なのであり、それがタイトルになっているのです。
この作品の魅力は、しばらく色褪せることがないと思います。
12、《あの家に暮らす四人の女》
4人の女性が暮らす家で起きる様々な事件と、それぞれの気持ちを描いた話です。
日々の嬉しさ、悲しい感情を分け合う家族のような繋がりが、何とも素敵に思ってしまいます。
ここがオススメ
序盤は和やかな気持ちでゆったりと、終盤にかけては笑ったり、涙ぐんだりと心が温かくなる話が綴られています。
爽快な読後感に浸ってしまう作品です。
まとめ
圧倒的なファンが多い三浦しをん氏の作品ご紹介は、お楽しみいただけましたでしょうか。
巧みな文章世界に、浸っていただけたと思います。
まだ読んでいない作品がありましたら、この機会に是非読んでみてください。
あなたの読書感が変わるかもしれません。