イマジネーションを持って描く、井上雅彦氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。
大学卒業後の1983年に「よけいなものが」という作品が、星新一ショートショート・コンクールにて、優秀賞を受賞して作家デビューを果します。
以降、怪奇性と幻想性に溢れたホラー小説やミステリー小説を発表していきます。
井上雅彦おすすめ作品8選をご紹介~想像力の世界で勝負する~
主な作品には「異形博覧会」、「1001秒の恐怖映画」、「珈琲城のキネマと事件」などがあります。
また、アンソロジストとしても活躍していて、企画・監修する「異形コレクション」シリーズで98年には日本SF大賞の特別賞を受賞しています。
そんな井上雅彦氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきますので、お楽しみ下さい。
1、『竹馬男の犯罪』
引退したサーカス芸人が余生を過ごす養老院である「天幕荘」で起こる連続殺人の話です。
密室状態の現場で死体が見つかり、その周りには壁をすり抜ける子供の足跡と、馬の蹄のような跡だけが残っていたのです。
畸形を見世物とした伝説のサーカス団の存在がチラついて、不気味でグロテスクなミステリーとしてより一層、物語を魅力的にしています。
ここがポイント
また、様々な本格ミステリのガジェットも使われていて、なかでも密室の扱い方がかなりユニークになっています。
物語全体に仕掛けられた罠に、思わず唸らされてしまう作品です。
2、『1001秒の恐怖映画ホラー・ショートショート』
「ドラキュラ」、「狼男」、「フランケンシュタインの怪物」等、外国の古典ホラーから、日本の懐かしい特撮映画である「ウルトラQ」までが収められた井上氏のホラーに対する愛情が感じられるショートショートです。
タイトルにありますように、ホラーショートショートとしても楽しめますし、解説が最後に記してあるので、ホラーの入門書としても楽しめることができます。
ここがポイント
いずれも短い文章の中に、巧みな比喩と叙述トリックじみた仕掛けが施されているので、飽きることがありません。
一粒で二度美味しい、コアなホラー好きには堪らない作品です。
3、『燦めく闇』
美しくも恐ろしい幻想的な話が13編詰まった、自選短編集です。
闇の中に蠢く得体の知れない不思議なものや、恐ろしいもの、しかし覗いてみたい、好奇心をくすぐる何かがそこには存在するのです。
ここがポイント
逃れたいのに絡めとられたくなるような、妖しげな魅力がそこにあるのです。
幻想怪奇ものの話は、一話読み終えるたびに、お腹いっぱいになりますが、読書の原体験のようなドキドキ感はどのジャンルよりも勝っているのではないでしょうか。
大切にそして、じっくりと堪能できる作品です。
4、『遠い遠い街角』
切なさと懐かしさが詰まった8編からなる短編集です。
昭和のレトロ時代を彷彿してしまうような、かってのあそび仲間たちが登場する摩訶不思議な話が描かれています。
まるで江戸川乱歩氏の「少年探偵団」か、昔の子供向けドラマの子役のような彼らの活躍が目に浮かびます。
ここがポイント
昭和30年代に子供時代を過ごした人なら、堪らない連作集であり、本当に懐かしいものばかりが上手く取り上げていて、それらを小道具や背景にして不思議な物語が過去と現在を繋いで語られているのです。
何度でも読み返したくなる作品に間違いありません。
5、『夜の欧羅巴(ミステリーランド)』
人気吸血鬼画家の母、ミラルカが失踪し、一人息子であるレイが、彼女の行方を追って冒険に出る話です。
古今東西の妖怪やら怪物が総登場で、舞台設定も日本とヨーロッパを股にかけるスケールで大いに楽しむことができます。
夜の商店街が、欧羅巴に繋がっているという発想が興味をひいてしまいます。
ここがポイント
ヨーロッパの怪異や幽霊が、次から次に登場するスピード感のある少年の冒険小説で、ゴシックでバロックで、グロテスクな雰囲気や外国語の響きに魅了される作品です。
6、『深川霊感三人娘』
お滿、お倫、お涼の江戸は深川で噂の霊感三人娘が、悪を懲らしめる話です。
霊と会話ができる船宿の娘、お滿、予知能力を持つ美剣士である、お倫、そして妖怪たちを斡旋するという、世にも不思議な口入屋の祖父に育てられた、お涼の三人娘それぞれが力を合わせて、許せぬ悪に立ち向かっていくのです。
ここがポイント
しっかりとした時代考証の上に、きちんと構成された変幻自在の物語に、しばし時を忘れて読みふけってしまう作品です。
7、『夜会』
吸血鬼のことをあらゆる角度から攻め込んだ18編からなる短編集です。
幻想的なムードが漂うしっとりとした路線から、深い闇と夜の空気、バイオレンスアクションなど、様々なタイプの不死者の話で楽しませてくれます。
ここがポイント
吸血鬼の話は勿論のこと、その枠を超えて、愛すべき闇の住民たちについての蘊蓄の話もたっぷりと詰まっています。
幻想的なヴァンピリズムの雰囲気に浸ってしまう作品です。
8、『珈琲城とキネマと事件』
元名画座であった古式ゆかしき喫茶店「薔薇の蕾」に持ち込まれる風変わりな謎を、常連客たちが推理していく、5話が綴られています。
ここがポイント
顔も分からない闇の中で仮名の常連客達が、映画への造形、蘊蓄を語りながら、謎を解いていくのです。
謎を解く鍵は、名作映画やその撮影方法などで、ノスタルジックな映画とミステリ好きの方には、堪らないと思います。
事件全体の謎と、その謎を解くきっかけである映画の蘊蓄が楽しめる作品です。
まとめ
井上雅彦氏の作品のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。
読書の楽しみが広がりますよ。