読者に衝撃をあたえる作品を描く、杉井光氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。
高校卒業後、フリーターを6年、ニートを3年経験し、フリーター時代には、アマチュアバンドでキーボードを担当していたそうです。
2006年に刊行された「火目の巫女」という作品で、第12回電撃小説大賞の銀賞を受賞し、作家デビューを果します。
杉井氏はかなりの速筆で知られていて、2008年の5月から10月にかけて、6ヶ月連続で、新刊を刊行していたそうです。
杉井光おすすめ作品8選をご紹介~ずっと求め続けられる物語を~
作風としましては、現代ものから、ファンタジーものまで幅広く、手掛けています。
杉井氏によると、ミステリーに不可欠な要素は2つあるそうで、一つ目は「驚かせる」そして2つ目は「納得させる」ことで、この2つを両立できて、初めて成立するのだそうです。
驚きに至るまでをロジカルに繋げて、納得できるカルタシスまでたどり着くのが、ミステリー作家の仕事なのだそうです。
そんな杉井光氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきますので、お楽しみください。
1、『神様のメモ帳』
ニート探偵として、路地裏に吹き溜まるニートたちを統べる美少女アリスが、事件解決に挑んでいく話です。
探偵ものですが、登場する仲間は皆なにかしらのNEETであり、もちろん安楽椅子探偵のアリスもニート、主人公のナルミも高校生だけど、無気力な面が多い、と社会的にはあまり歓迎されなさそうな面子ですが、どこか憎めないのです。
そんなニートの集まりに誘ってくれた彩夏と、その兄のまわりに起きた事件は、とても高校生や個人が関係できなさそうな内容なのですが、それでも必死にしがみ付こうとしていくのです。
ここがポイント
泥臭く、人間らしい、這いつくばっても何とかしようという気概を感じる作品です。
2、『さよならピアノソナタ』
粗大ごみの投棄場所で出会った、ナオと真冬が織りなす王道のボーイ・ミーツ・ガール作品です。
ナオも鈍いし、少しズレているのですが、部屋の奪還を賭けた勝負をきっかけに、心を閉ざしていた真冬と音楽を通じて、そして行動を共にしていくことで、少しずつ心が、通い合っていくのです。
自称革命家の神楽坂先輩もいい具合にかき回してくれるし、幼馴染の千晶もいい味出しています。
ここがポイント
目の前で演奏されているかのような臨場感のある演奏シーンが最大の魅力となっていて、音楽に詳しくなくてもグイグイと引き込まれていくような作品です。
3、『すべての愛がゆるされる島』
不倫であろうと近親愛であろうと、どのような形の愛でも受け入れてくれる島の教会を舞台とした愛の物語です。
同性愛であろうが、近親相姦であろうが、どんな愛でも許される島に、父と娘、姉と弟、それぞれが何かを求めて訪れたのです。
神や聖書などの教えを用いて、何度も愛とは何かということが語られています。
物語りの中では、誰もが痛々しいほどに誰かを想い、求めている姿に胸が苦しくなってしまいます。
ここがポイント
世間では受け入れられない愛を中心に、ストーリーが進んでいたと思いきや、後半にはそれが間違いだったと気付かされてしまうのです。
交互に繰り返される視点移動が、上手く機能している作品です。
4、『終わる世界のアルバム』
突然、人間が消滅し、周囲の人々の記憶からも消えてしまう世界で、記憶を保持することができる主人公の切ない恋と葛藤の話です。
人が死ぬのではなくて消えていく世界、消えた人は、周りの記憶からも完全に消えてしまい、その人が存在していた証拠は何一つ残らないのです。
主人公はそんな世界でただ一人、消えた人間に関する記憶を持ち続けているのです。
ここがポイント
そして周りとの距離を置くことで、そのことに深い想いを抱かせないようにしていたのですが、大切な人が消えていくにつれてそれまで感じなかった感情を抱いていくのです。
そして不思議な女の子と出会うのですが、、、。
寂しい主人公のような生き方は、若者にはありがちなのでしょうか。
すっきりとした終わり方ですが、心のどこかに棘が刺さったような痛みが感じられる作品です。
5、『生徒会探偵キリカ1』
生徒数8000人の超巨大学園の生徒会に、無理やり引きずり込まれた男子高校生の牧村ひかげが主人公で、総額8億円もの生徒会予算を握る不登校児の生徒会探偵、聖橋キリカを手伝う話です。
そこに登場する魅力的なキャラたちと、どことなく感傷を誘う一人称の文体は、ライトノベル×学園ミステリの最高峰といえるのです。
ここがポイント
お金を介在させることでしか、人との繋がりを持てないでいるキリカは、彼女の言う通り探偵が真実を暴くだけで、誰も教えない存在ならば、人物の狭間を埋めて、解決に導くのが生徒会詐欺師なのだそうです。
巻き込まれ型主人公が奔走するように、王道ライトノベルの風格を感じる作品です。
6、『楽聖少女』
悪魔メフィストフェレスに連れられ、二百年前のウィーンにタイムスリップした高校生のユキは、そこで文豪ゲーテの肉体となってしまい、日本人としての意識を保ちつつ、何とか元の世界に戻る方法を考える話です。
悪魔の力でゲートとして転生したユキが、何故か少女になっているベートーヴェンに出会ったことで、運命が回りはじめるのです。
史実に基づきつつも、いろいろと改変されていたり、音楽がベースになっているけれども、バトルっぽい要素も含んでいます。
教科書に載っているメジャーどころから、ほどんど知らないマイナーな人まで幅広く出てくるので、ある程度知識があった方が楽しめるのかもしれません。
ここがポイント
音楽や歴史に疎くても、十分に楽しめる作品です。
7、『楽園ノイズ』
出来心で女装してインターネットに演奏動画を投稿したら、大人気になったのはいいが、高校の音楽教師にバレてしまい、弱みを握られて、こき使われる話です。
そんな中で、元天才ピアニストの凛子や華道家元のドラマーの詩月、不登校のボーカリストの朱音といった問題を抱えるヒロイン達に触れ、立ち直らせ、バンドを組むのです。
ここがポイント
美少女ゲームをプレイしているかのような軽快な掛け合いは心地よく、音楽描写の熱量はその方面に明るくない方でも十分に伝わってくるものがあって、盛り上がることができます。
コミカルな雰囲気も絡んだ楽しめる作品です。
8、『世界でいちばん透きとおった物語』
大御所ミステリ作家の宮内彰吾の隠し子である藤阪燈真が、異母兄に父の行方不明の遺稿を探すことを頼まれる話です。
愛人の子であり、父も母も亡くし、目に障害を抱えて、天涯孤独で僅かばかりのお金で、慎ましく暮らしている燈真にとって、逢ったこともない父は、母を捨てた憎しみや憎悪の対象でしかなかったのです。
しかし本当の答えを探すために、彼は亡き父の遺稿を探すのですが、調べれば調べるほど、父の醜態が明らかになっていくのです。
しかし真実が分かった時、彼の目の前には、澄んだ透き通った世界が広がるのです。
ここがポイント
紙の本で、読書をすることにストーリーから付加価値を付けていくという斬新な手法により、物語りは展開していくのです。
なるほど、これでは、電子書籍化、絶対不可能です。
まとめ
杉井光氏の作品のご紹介は、お楽しみいただけましたでしょうか。
読者を飽きさせない工夫は、感じ取っていただけたと思います。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。