鋭い感性を持った、秦建日子氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。
大学卒業後、クレジット会社に就職し、飛び込み営業をしていたとき、たまたま、劇作家のつかこうへい氏の事務所に伺い、偶然にもつかこうへい氏本人と出会い、師事することになったようです。
1993年には、つかこうへい事務所特別公演の「プラットホーム・ストーリーズ」の戯曲家、演出家としてデビューします。
1997年にそれまで勤めていたクレジット会社を退社して、作家専業の生活に入ります。
秦建日子おすすめ8選をご紹介~人間らしいアナログをキープする~
そして1998年には、日本テレビの火曜サスペンス劇場で船越英一郎・片平なぎさ主演の人気シリーズである、「小京都ミステリー」のシナリオライターとして抜擢されます。
その後も数々のゴールデンタイムのドラマなどを執筆し、活躍の場を広げています。
2004年には、ミステリー「推理小説」という作品で小説家としてもデビューを果し、同作は「アンフェア」のタイトルでテレビドラマ化され大ヒットしています。
そんな秦建日子氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきますので、お楽しみください。
1、『推理小説 刑事 雪平夏見』
刑事・雪平夏見シリーズの第一弾で、ドラマ「アンフェア」の原作でもあり、推理小説の筋をなぞり、実行されていく殺人事件の話です。
会社員と女子高生が公園で殺され、更に犠牲者は増えていくのですが、捜査は難航を極めます。
事件を繋ぐのは、「アンフェアなのは、誰か」という本の栞(しおり)のみなのです。
そしてついに登場するのは、検挙率ナンバーワンの女刑事、雪平夏見なのです。
ここがポイント
不器用だからこそ、真直ぐに進む、世間体を気にしない刑事としての生き方はカッコ良すぎます。
小説のセオリーをストーリー内に提示しつつ、それを裏切るかも知れないという示唆もしていて、なかなか出会えない切り口の作品です。
2、『アンフェアな月 刑事 雪平夏見』
刑事・雪平夏見シリーズの第二弾で、生後3ヶ月の赤ちゃんが誘拐される話です。
奇妙なことに誘拐犯からは何の要求もないまま、家出少女の事件なども絡んできて、新たな様相を呈していきます。
スピーディーで軽快なドラマ仕立てになっていて、主役の雪平夏見は前作よりもさらに、クールで超人的な刑事として、描かれています。
ここがポイント
ドラマでは死んだはずの相棒の安藤がまだ生きていたりと、ドラマとは別の話になっていますが、結構、楽しめます。
構成も前回同様に独特の世界観があり、引き込まれてしまう作品です。
3、『愛娘にさよならを 刑事 雪平夏見』
刑事・雪平夏見シリーズの第四弾で、二か月前の事件で負傷し、捜査一課から外された雪平が、引き離された娘への思いに揺れながら、再び捜査へ加わる話です。
前作のラストで、銃弾に倒れた雪平の場面から物語が始まり、左手に障害が残った状態で、新たに配属された部署で勤務するのです。
ある日、新部署の上司に誘われて、ホームパーティーに参加するのですが、上司が殺害され、雪平も犯人に襲われてしまいます。
ここがポイント
果たして犯人は誰なのか、そこからまた、雪平の捜査が始まり、展開していくストーリーと共に途中に挟まれる少女からの手紙が謎を深めていきます。
雪平の不器用さと哀しさに、心打たれる作品です。
4、『アンフェアな国 刑事 雪平夏見』
刑事・雪平夏見シリーズの第五弾で、警視庁警務部から新宿署組対課に異動した雪平が、薬物中毒者による轢き逃げ事件の再捜査の相談を受ける話です。
ここがポイント
その轢き逃げ事件は、やがて雪平の身に危険を及ぼし、国際問題にまで発展する危険を孕んでいたのです。
左腕が動かないので、雪平自身のアクションシーンは皆無であり、怪しげな人物も盛りだくさんですが、チーム雪平の仲間の絆が心地よく描かれていて、かなり楽しめます。
隣国の外交関係も絡めながら、昨今騒がれている犯罪の低年齢化、ドラッグ、盗撮など問題点も投げ掛けている作品です。
5、『殺人初心者 民間科学捜査員・桐野真衣』
民間科学捜査員・桐野真衣シリーズの第一弾であり、民間科捜研に転職したダニ研究者の桐野真衣が、殺人事件の捜査に巻き込まれていく話です。
事件は情報漏洩に関する指紋照合から始まるのですが、それともう一つのストーリーが混ざって話は展開していきます。
本作は秦作品特有の思わせぶりな描写が、随所に導入されていて、テンポのいい平易な文章は中だるみを感じさせません。
ここがポイント
公的な科捜研とは異なる立ち位置で、事件解決に動いていくのも、興味深く、先が気になります。
また秦氏が脚本家ということもあり、テンポも良く、キャラクターもかなり特徴的で楽しめる作品です。
6、『冤罪初心者 民間科学捜査員・桐野真衣』
民間科学捜査員・桐野真衣シリーズの第二弾であり、アジアの貧しい国から出稼ぎに来ていた男性が障害の冤罪で捕まり、その母親から依頼を受けて捜査する話です。
今回は冒頭からの銃撃シーンや、鼻を削ぎ落される猟奇的な殺人事件、ドラッグ、イジメ等の内容で盛りだくさんです。
ここがポイント
相変わらずの個性的なキャラクターたちのテンポのいいやり取りの描写は、流石の一言につきます。
桐野お得意のダニでの捜査は、少ししか出てこなくて残念ですが、桐野の葛藤中の心の声や、ヤクザに引き抜きを仄めかされ、年収と評価されることに素直に心揺れたりと、かなり楽しむことができます。
次作への展開も期待できそうな感じの作品です。
7、『サイレント・トーキョー: And so this is Xmas』
クリスマスを直前に控えた東京で、連続爆弾テロが発生するのですが、犯人の要求は首相との対談であり、要求に応じなければ、更なるテロを起こすという話です。
捜査に乗り出す警察、爆発に巻き込まれた被害者、犯人に利用された主婦と若者、そして謎の男など、複数の人間に焦点を当てながら、物語は展開していきます。
ここがポイント
それぞれの関係が織りなす物語が、次への展開を脅かしていくのです。
要所要所に挟まる黒いページを読み進める度に、その内容が示す次への展開にゾクッとさせられます。
想像を絶するラストに驚愕してしまう作品です。
8、『ダーティ・ママ』
43歳でシングルマザーの刑事、丸岡高子が1歳の愛息、橋蔵を伴い、新人刑事の24歳の長嶋葵と事件を解決していく話です。
長嶋葵は交通課から刑事課にスカウトされた新人刑事であり、初出勤した時に驚愕の事実を知ってしまうのです。
何と、彼女は同僚でシングルマザーの丸岡高子刑事の息子の橋蔵のベビーシッター役として、連れてこられたのです。
また葵は、丸岡のルール無用の捜査手法に驚きを隠せないまま、丸岡のペースに巻き込まれていくのです。
とにかく丸岡が痛快であり、世のお母さんたちが言えないようなことを、ズバっと言ったり、行動したりで気持ちいいのです。
ここがポイント
軽く読めて、ギャグ漫画のように楽しめる作品です。
まとめ
秦建日子氏の作品のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
読書の楽しみが広がりますよ。