序盤から物語の中に引き込まれてしまう、朝倉秋成氏のおすすめの作品7選をご紹介させていただきます。
朝倉氏は大学卒業後、印刷会社の営業マンを経て、2012年に、第13回講談社BOX新人賞Powersを受賞した「ノワール・レヴナント」という作品で、作家デビューを果します。
長いスランプのあと、2019年に刊行した「教室が、ひとりになるまで」という作品が、第20回の本格ミステリ大賞と第73回日本推理作家協会賞長編及び、連作短編賞部門にWノミネートされ、注目を浴びます。
浅倉秋成おすすめ作品7選をご紹介~誰もが納得する物語を描く~
さらに2021年刊行の「六人の嘘つきな大学生」という作品が、4つの主要ミステリ・ランキングすべてにランクインし、第12回山田風太郎賞候補、2022年の本屋大賞にノミネート、そしてブランチBOOK大賞2021を受賞します。
現在は集英社のジャンプSQにて、原作をつとめる「ショーハショーテン!」を連載中です。
そんな朝倉秋成氏のおすすめの作品7選をご紹介させていただきますので、どうぞお楽しみください。
1、『ノワール・レヴナント』
特殊な能力を得た4人の高校生が、ある日、ある場所に集められ、協力をしてミステリアスな謎を解決をする話です。
不思議な声と、奇妙な経緯により導かれ集った高校生の男女4人は、「何故、自分たちは集められたのか?」の答えを求めて行動を起こす青春群像劇なのです。
メインの男女4人各々の視点から、綴られる物語は、5日間という期間の話とは思えない程に濃厚で起伏に富んだ展開でかなり楽しむことが出来ます。
ここがポイント
クセの少ない丁寧な文章も読み易く、登場人物のキャラクターもライトノベルに寄ったような極端なものではなく、自然に好感を抱く造形で、大変魅力的に描かれています。
きっちり伏線が回収されて、清々しいエンディング作品です。
2、『フラッガーの方程式』
先端科学の力か何かで、現実をご都合主義的なドラマに変えて、その中で主人公になれるという夢のシステムの話です。
日常をドラマチックに演出する、画期的な発明である「フラッガーシステム」のモニターに選ばれた主人公の高校生の涼一は、密かに思いを寄せるクラスメイトとの感動的なロマンスを望むのですが、、、。
美少女との同棲、財閥のお嬢様との恋人ごっこ、魔法少女と一緒に謎の組織との対決など、深夜アニメでお目にかかるようなパターンの展開がてんこ盛りになっています。
ここがポイント
朝倉氏ならではの怒涛の伏線回収にどんでん返しもしっかりと盛り込まれ、かなり楽しめます。
物語りの全てが、フィクションへの愛という、テーマに収束する完璧な美しさが味わえる作品です。
3、『失恋覚悟のラウンドアバウト』
ラウンドアバウトがある、日の下町で起きる様々な恋模様を描いた5編からなる連作短編集です。
どの話もライトミステリとしての構成がしっかりしている上に、ベタなギャグのオンパレードもあり、この組み合わせが何とも相乗効果を醸し出しています。
ここがポイント
軽快で、尚且つ読み易い文体で、突飛ながら愛すべきキャラクターや魅力的なセリフ回し、そして何よりも張り巡らされた伏線の見事な回収が楽しめます。
ラノベ調の軽快な筆致も、楽しく、作風の広さに感服してしまう作品です。
※ラウンドアバウト:合流と分岐を繰り返す円形の交差点で、信号は無く、時計回りで通行し、安全に進行方向を変えることができる交差点。
4、『教室が、ひとりになるまで』
ある高校の教室で、連続して起きる自殺の謎を解いていく話です。
自殺した生徒は皆、死の直前に共通のメッセージを残しているのですが、果たして本当に自殺なのかという事を主人公、垣内友弘らが、解明していきます。
その高校には代々、特殊能力を持つ4人の生徒が居て、垣内はその力を継承して、死の原因に挑んでいくのですが、、、。
ここがポイント
学校ならではの閉塞感を上手くミステリに絡めていて、人間関係を巡るしがらみのことを、社会に出ても、つきまとうであろうことを教えてくれています。
どこの学校にもあるスクールカーストと、誰もが抱える微妙な価値観が表現されている作品です。
5、『九度めの十八歳を迎えた君と』
主人公の間瀬が、通勤途中の駅のホームで見かけた、かって好きだった同級生の二和美咲は、なんと高校生の姿のままであり、その謎に迫る話です。
元同級生が年も取らずに、18歳をずっと繰り返している理由をずっと探るという不思議なシチュエーションで、その”年をとらない“という事実が、違和感なく受け入れられている世界だったのです。
ファンタジー寄りでもなく、学生時代の仄かな感情を思い出していく、青春ミステリーのようでもあります。
ここがポイント
主人公の大人になって妥協を覚えていくリアルさと、夢を追いたい若さゆえの瑞々しさの両方を感じることができます。
人知を超えた設定の中にも、いつの世も変わらない人の優しさを感じてしまう作品です。
6、『六人の嘘つきな大学生』
就活の最終選考で行われた、グループディスカッションで起こった事件の犯人探しがテーマの話です。
人気の会社の最終面接に残った就活生6人は、チーム一丸となって採用を目指していくのですが、途中で大波乱が起きてしまうのです。
内定を賭けた議論が進む中、6通の封筒が発見され、それぞれに個人名が書かれていて、中には「〇〇は人殺しだ」という告発文が入っていたのです。
同じように白黒はっきりさせようと青さが、お互いの信頼を裏切り、傷つけてしまったのかも知れません。
大人になりたての彼等の目に映る社会の姿と、実際の社会の姿はあまりにもかけ離れた存在に思えたのかも知れません。
ここがポイント
必死に生きる若者たちのズレてしまった歯車を、少しずつ検証して現れた真実は、酸いも甘いも判断できる大人への一歩かもしれないと思える作品です。
7、『俺ではない炎上』
自分のSNSにアップされた、身に覚えのない女子大生の殺害写真から、ネット上で殺人犯に仕立て上げられた、平凡な会社員が、事件の真相を探っていく話です。
住所も顔もネットに晒され、警察と市民から追われる立場になった彼を陥れた犯人とは、果たして誰なのか。
ネット住民の無責任は発言に怒りを覚えつつも、圧倒的な数の力で、デマを真実のように見せてしまう怖さを感じてしまいます。
ここがポイント
追い詰められた人間の逃亡劇に、ハラハラ感が半端なく、時間軸をずらす叙述トリックも巧みに駆使されていて、楽しめます。
「他人の不幸は蜜の味」を思わせる、疾走感のある極上のエンタメ作品です。
まとめ
伏線の狙撃手の異名を持つ、朝倉秋成氏の作品のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。
新しいミステリーに出会えますよ。