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葉室麟おすすめ作品8選をご紹介~負けてからが、人生なのです~

武士の生き様を描く、葉室麟氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。

大学卒業後、地方紙記者、ラジオニュースデスク等を経て2005年に江戸時代は元禄期の絵師である尾形光琳と陶工である尾形乾山の兄弟を描いた「乾山晩愁」という作品で第29回歴史文学賞を受賞します。

50歳を過ぎてから小説を書き始めた葉室氏、そしてその年齢になると、自分の人生が思っていたものと違う事が分かるようで、その愁いともいえる感情を同じ年代で悩みくすんでいる印象を持つ歴史上の人物に重ね、自分なりの答えを見出そうと書いたのが「乾山晩愁」だったそうです。

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葉室麟おすすめ作品8選をご紹介~負けてからが、人生なのです~

また、葉室氏は人間、「負けてからが人生」だと思っているそうで、挫折を経験することで、自分が何者か、自分に何があるかを突き詰めて考え、本当の自分になるために努力して生きていくのだそうです。

たとえ思い描いたとおりにならなくても、振り返ってみて、「頑張った、できる努力はやり切った」と思える生き方をしたいとのことだったようです。

しかし、2017年の12月23日に福岡市の病院で病気により66歳でその生涯を閉じています。

そんな死を悼み、直木賞作家の安部龍太郎氏は「優しく思いやりが深い。自分よりも人のことを先に考える。人の痛みが分かる苦労人でもあった。」と述べています。

そんな葉室麟氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきますので、お楽しみください。

1、『銀漢の賦』

身分も立場も異なる、幼馴染3人の人生が、運命の分れ道といった重大な局面で交差する話です。

良き友であった3人の少年が、成長するにつれて、それぞれの身分や立場の違いから疎遠になっていきますが、心の奥底ではその友情は変わることはなかったのです。

ここがポイント

理解し合い、信頼できる友人を持つことは、この上ない幸せであったと思います。

将監や十蔵のような英雄的な生き方に比べると、一見凡庸に見える源五の生き方。

それぞれの立場で、それぞれが正しいと思った生き方をして、そしてそれを貫いていくことは並大抵のことではできないと思います。

男同士の友情の在り方が描かれている作品です。

文藝春秋
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2、『蜩ノ記』

羽根藩シリーズの第一弾であり、限りある命をいかにして締めくくるのか、死を迎えるまでの日々の生き方を問う話です。

豊後羽根藩の城内で障害沙汰を起こしてしまった庄三郎は、僻村で男女の不義を問われ、十年後に切腹を言い渡されている戸田秋谷を監視することになります。

庄三郎は村人にも頼られる秋谷の武士の鏡たる生き様に徐々に惹かれていき、冤罪を疑うようになっていくのです。

そんな中二人は命じられている藩史の編纂中に、ある秘密に気付いてしまうのです。

現代よりも遥に理不尽な死が蔓延っていた時代に、濡れ衣を着せられ、虐げられながらも、自分の信念を貫き、家族をも守るために誇り高く戦う、姿に心を打たれてしまいます。

ここがポイント

儚くも美しい、本当の武士の生き様を描いた作品です。

3、『無双の花』

立花の義(決して裏切らない)を死ぬまで貫き通した九州の戦国武将、立花宗茂の話です。

太閤秀吉の九州征伐の折に、その武功から無双の者と称賛され、律儀者の宗茂は秀吉への恩から西軍に加わるも武運つたなく、関ヶ原の戦いに敗れてしまいます。

しかし、宗茂は立花の義を重んじ、他の武将に召し抱えられようともせず、いつかは柳川城に戻ることを胸に抱き、家臣と共に京に上り苦節を経て家康に召し抱えられるのです。

そして更に大阪の陣を経て、泰平の世を作ろうとした家康の仲間になり、ついに柳川城に帰還するのです。

また、彼の強運は、誾(ぎん)千代という三十代半ばで亡くなった奥方の強い念があったからかも知れません。

ここがポイント

戦国の世を生きる武将の生き様に、現代では計り知れない人の性が見えてくる作品です。

4、『散り椿』

扇野藩シリーズの第一弾であり、派閥争いに巻き込まれていく者たちの愛と、友情の物語を散りゆく椿の花になぞらえて描かれている話です。

ここがポイント

江戸時代西国の小藩で起こった権力闘争がミステリーの要素も交えながら、描かれています。

主人公の瓜生新兵衛は不遇のまま藩を出た剣客の浪人であり、それが妻の死をきっかけに生国に戻ることになるのですが、元いた藩は丁度、権力闘争の真っ最中であり、家老を中心にその刃は藩主にまで向かっていたのです。

瓜生は友人でもある藩の重職と再び出会い、藩を我が物にしようとする家老と対立しますが、彼が藩を出たいきさつが次第に明らかになるにつれ、過去に起こった殺人の真相も明かされていくのです。

そして最後に命を投げ打ってでも、人とのつながりを守ろうとする、絆の強さを感じます。

心の中が洗われた様な清々しさに満たされる作品です。

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5、『螢草』

早くに両親を亡くした菜々、十六歳で鏑木藩の風早家に奉公に上がり、人々に助けられ、父親の仇を討つと同時に主人の濡れ衣を晴らし、主人と自分の運を開いていく話です。

人の命を守るのが女の役目、そう亡き主に教えられた言葉を胸に懸命に残された子供たちを守る菜々。

物語の本筋は仇討ですが、女中の身で自身ができることを一歩ずつ歩んでいく姿が素晴らしく描かれています。

また、菜々が出会う、だんご兵衛さん、お骨さん、死神先生、駱駝の親分もとても個性的であり、文句を言いながらも、菜々や子供たちを見守って助けてくれるのです。

ここがポイント

少し軽めの勧善懲悪であり、かつ人情味溢れた娯楽性の高い痛快時代劇作品です。

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6、『さわらびの譜』

扇野藩シリーズの第二弾であり、藩重臣の娘、有川伊也と弓上手、樋口清四郎が藩の抗争に巻き込まれながらも、自分の気持ちに正直に突き進む話です。

扇野藩重臣の娘で女性さながら弓を極めんとする主人公の伊也と、同じ藩の弓術の使い手の清四郎とのお互い同士秘めた想いを軸にして、弓術の派閥の意地のぶつかり合いに、やがて藩の勢力争いが絡み、次々に難題が降りかかってきます。

ここがポイント

厳しい状況下の中で、意地を貫き通す登場人物たちの姿は鮮烈で胸が打たれます。

一途に思いを定め、それを弓に託してひたすら射続ける姿は、女性ながら武人としての矜持を持ち続ける伊也はあっぱれです。

戦国の世の女性の凛々しさが味わえる作品です。

7、『春雷』

羽根藩シリーズの第三弾であり、どんなに嫌われようと、恨まれようと為すべきことを為そうとした多聞隼人の話です。

人びとを苦しめ、恐れられ、鬼とまで言われ、忌み嫌われた武士の鬼隼人こと多聞隼人。

しかしその真意は不正義を憎む心であり、自分の正義を語るだけで、人を謗り、何も為そうとせず、のらりくらりと日々を過ごし、領民の苦しみを見ようともしない為政者への怒りだったのです。

そんな為政者に抵抗する術を持たない民への憐れみを誰よりも持っていたのです。

ここがポイント

自分の価値観のみに従ってしまうと、反発にあってしまうし、背けて生きると、人生は空しいものになってしまうかもしれないのです。

正義の在り方を問う傑作です。

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8、『孤蓬のひと』

希代の大茶人である、小堀遠州の生涯を描いた話です。

老境に差し掛かった小堀遠州が過去を回想する形で、織田、豊臣から徳川の世を生きた人々との交流と逸話を綴った10編です。

1編ごとに歴史上の人物たちの知られざる一面を垣間見える思いがして、どれも静かで落ち着いていながらも、印象深く描かれています。

ここがポイント

人との運命の出会いの妙が、心の奥底まで沁みいってくるような感覚になってしまいます。

歴史的なエピソードを踏まえて、生き生きと描かれている作品です。

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まとめ

葉室麟氏の作品はお楽しみいただけましたでしょうか。

敗者や弱者の視点を大切にした歴史時代小説が堪能できると思います。

まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。

楽しみがひろがりますよ。

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