多彩なスキルで魅了する、辻真先氏のおすすめ作品8選をご紹介させていただきます。
大学卒業後、1954年にNHKに入社して、人気番組の制作、演出などと担当していたのですが、1962年にNHKを退社します。
その後人気アニメの「エイトマン」、「ジャングル大帝」、「巨人の星」、「サザエさん」、「ドラえもん」等の数多くの脚本を手掛け、この世界の第一人者となります。
1972年には「仮題・中学殺人事件」という作品でミステリー作家としてデビューします。
そして1981年には小説「アリスの国の殺人」で、日本推理作家協会賞を受賞しています。
辻真先おすすめ作品8選をご紹介~工夫と情熱を持って描写し続ける~
現在においても、テレビアニメの「名探偵コナン」の脚本を手掛けるほか、大学教授として後進の指導にもあたっています。
また辻氏は、小学校に入る前から、無類の漫画好きだったことが幸いして、今の自分があるようで、趣味であり、好きなことがそのまま仕事になる幸せを感じているようです。
現在、お酒は毎日飲んでいて、お酒のおかげでよく眠れるそうで、今は寝ることが最高の趣味だそうです。
そんな辻真先氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきますので、お楽しみください。
1、『仮題・中学殺人事件』
「真犯人はきみなんです」、つまり読者が犯人と宣言してから、始まる話なのです。
読者が犯人という究極のミステリーを、構成の巧みさで見事に実現してみせた怪作です。
そしてその設定の斬新さだけでなく、若い読者に向けた本格ミステリー小説としても非常に質の高さが伺えます。
ここがポイント
コミカルな作風の中にも、シリアスな要素が散りばめれていて、とても味わ深いものがあります。
主人公である、スーパー&ポテトの二人の軽妙なやり取りも楽しく、遊び心に溢れた感覚の作品です。
2、『盗作・高校殺人事件』
新宿駅のホームで起きた爆発事件で知り合った高校生3人が、それぞれのカップルで訪れた鬼鍬村で起きる密室殺人に巻き込まれる話です。
「作者が被害者で、犯人で、探偵」という、メタフィクション的な仕掛けを含んだミステリーになっています。
ここがポイント
本作は何の衒いもない高校生たちの何気ない、日常風景の中に、アッと驚くトリックを忍ばせているのです。
ストーリーのプロットも上手く練られていて、話のテンポも軽快で歯切れよく、ストレスなく読める作品です。
3、『天使の殺人』
犯人も作者も誰だか分からない、という劇中の筋書きと天使が天使長に指示されて犯人を推理するといった二重構造の話です。
ここがポイント
物語の登場人物と舞台の最初の設定は、ほぼ同じなのですが、展開と結末が違ってくるのです。
小説版と戯曲版の「天使の殺人」が収録されていて、主役の座を巡る3人お女優の戦い、そして演出家のたくらみに、天から見守る天使たちの思惑が加わることで、自由なラストを作りだしているのです。
もともと推理劇としても上演されていたものだけに、推理小説というよりも、劇の台本という印象が強い作品です。
4、『探偵Xからの挑戦状!』
探偵Xからの挑戦状!と題し、問題編と回答編に分かれた8話を8人の作家先生がそれぞれ描いています。
NHKの視聴者参加型ミステリー番組の原作として、それぞれの作家先生が執筆されたものです。
「問題編」と「回答編」の2部構成で、かつ映像化が前提という条件を同じくしながらも、ミステリークイズ風の作品一色にならず、8人8様の色合いの異なる「真相当て」を楽しませてくれます。
ここがポイント
それぞれの作品が短いので、物足りなさは残りますが、未読の作家の味見としては丁度いい具合になっています。
犯人当ての醍醐味を味わうには、楽しめる作品です。
5、『戯作・誕生殺人事件』
40年に渡るスーパー&ポテトシリーズの完結作となります。
今作はキリコの出産と情報通の女性ヘルパーの殺人、それと46年前の少女消失、江戸時代の歌舞伎を舞台にした懸賞応募作、6年前の劇団の家事などが絡んで、ストーリーは展開していきます。
ここがポイント
既存のトリックやプロットの積み重ねではありますが、却ってその単純さに騙されてしまいます。
相変らずの作中作が生きてくる設定は健在であり、安心して楽しめます。
辻氏らしい「毒」も振りまかれた、スーパー&ポテトシリーズらしい作品です。
6、『深夜の博覧会』
戦前の昭和を背景とした事件を少年、那珂一兵が解き明かしていく話です。
ここがポイント
昭和12年という時代背景の中で、様々な立場の人間模様が描き出されています。
絵描きの修行をしている那珂一兵が、あっけらかんとした新聞記者の瑠璃子に依頼された仕事先で、不可解な猟奇事件に巻き込まれてしまいます。
奇妙なカラクリ屋敷にエログロ有りですが、下品ではなく、戦後エピローグの複雑な想いと共に、切ない余韻が残ります。
謎解きと共に、当時の空気感も感じられる作品です。
7、『焼跡の二十面相』
終戦直後の東京を舞台に復活した、怪人二十面相と小林少年の活躍を描いた話です。
戦争が終わり、焼け野原となった東京で、少年探偵団の小林少年は、戦地から戻らない明智小五郎の帰還を待ちながら、龍土町の家を守る日々を送っていたのです。
戦時中に軍需産業で大儲けをしていた財閥が関わる美術品の窃盗計画を阻止するために、怪人二十面相と対決することになります。
ここがポイント
戦後日本の繁栄の陰には、その節操のなさで復興に大いに貢献したのかも知れない人々の姿も浮き彫りにしながら、昭和の子供が心躍らせたヒーローを蘇らせたのです。
切り口が斬新で楽しめる作品です。
8、『たかが殺人じゃないか』
昭和24年、高校3年生の男女5名が遭遇した、密室殺人事件と首切り殺人事件の話です。
名古屋を舞台に戦後、共学化された高校3年生の周りで2件の殺人事件が発生します。
本作の見どころは、戦後間もない時期に、急速に変化していく風俗や、人々の価値観変容を窺い知れることなのだと思います。
このことは事件の動機にも深く関連していて、物語の中でも新旧の価値観が衝突する様があちこちで描かれています。
ここがポイント
変われない側と変わった側の対立は、常に繰り返されていくのです。
タイトルの意味と同時に、時代背景のリアルさと伏線の巧さに感心してしまう作品です。
まとめ
辻真先氏の作品のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
ご高齢にも関わらず、そのバイタリティあるれる筆力には恐れ入ってしまいます。
まだ、読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。
読書の楽しみがますます、広がると思います。