異世界を描くことに定評のある、森見登美彦氏のおすすめ作品15選をご紹介させていただきます。
2003年、大学在学中に執筆した「太陽の塔」という作品で第15回ファンタジーノベル大賞を受賞して小説家デビューを果たします。
2006年には「夜は短し歩けよ乙女」という作品で山本周五郎賞、第4回本屋大賞を受賞します。
そしてしばらくは、国立国会図書館職員として働く傍ら兼業作家として、執筆活動を続けていくこととなります。
森見登美彦おすすめ作品15選をご紹介~現実と別の世界を描く~
その後、国会図書館を退職して専業作家になるのですが、連載を抱えすぎて、行き詰ってしまいます。
そして故郷の奈良に帰り、1~2年のペースで、単行本化していない作品や、中断していた作品を大幅に書き直しながら刊行していきます。
そんな森見登美彦氏のおすすめ作品15選をご紹介させていただきますのでお楽しみください。
1、『太陽の塔』
モテない男子京都大学生の、ユニークで、そして哀愁に満ちた日々が、いかにも知的な文章で、綴られた話です。
女性と縁がない自分を強がりながらも、それでいて、やっぱり他人を羨ましく思い、世間から置いてけぼりにされているような疎外感を感じる描写が印象に残ります。
ここがポイント
奇想天外なことや摩訶不思議なこと、そういった謎めいた感じが古都、京都の街と交じり合って何とも絶妙で濃厚な世界を創り出しています。
独特の世界観を感じてしまう作品です。
2、『四畳半神話大系』
大学生活をやり直したいと思っている、冴えない大学3回生の主人公が、迷い込んだ4つの並行世界の話です。
友人に恵まれず、いつも悪友に振り回されていて、恋人もできず、俗に言うバラ色のキャンパスライフは夢のようにだったのです。
もしも、あの時、違った道を選んでいたなら、今の自分は違っていたかもと、誰もが考えてしまうことが綴られています。
4話構成になっていて、それぞれの話は一見独立しているように見えますが、実はすべてが繋がっているのです。
ここがポイント
摩訶不思議な文章構成に、引き込まれてしまう作品です。
3、『きつねのはなし』
何とも言えない不思議な世界観が詰まった、4編からなる短編集です。
どの話も京都が舞台になっていて、日本の歴史と共に様々な事象が起こった場所だけに、行き場を失った想いが集まる掃きだめができても不思議ではなかったのです。
ここがポイント
人間の心の奥底にある恐怖が、じんわりと沁み込んでくるような怖さを感じてしまう作品です。
4、『夜は短し歩けよ乙女』
「黒髪の乙女」に密かな想いを寄せる先輩の話が綴られています。
ここがポイント
京都が舞台であり、大学生の恋愛成就までの道のりを、男性と女性の視点で、おもしろ可笑しく描かれています。
先輩のいつまでも外堀だけを埋めているヘタレなところと、黒髪の乙女の好奇心のまま行動するという無邪気な取り合わせが妙にマッチングしていて、なぜか楽しめます。
古都、京都の雰囲気が伝わってくる作品です。
5、『新釈 走れメロス 他四篇』
ここがポイント
文学史に名を残した古典的な短編を、森見氏ならではの切り込みで現代風に表現した5編からなる短編集です。
原作の内容をもとに、うだつの上がらない大学生が、京都を舞台に暴れ回っていきます。
おもしろ可笑しい話ばかりでなく、不気味な雰囲気を漂わせる話もあり、メリハリがあり、かなり楽しめます。
まるでその時の状況が、目に浮かんでくるような作品です。
6、『有頂天家族』
京都の下賀茂神社の糺(ただす)の森に暮らす、狸の家族の波乱万丈な話になります。
偉大な父を亡くした狸四兄弟が、天狗や人間たちと敵味方入り乱れて、騒動を巻き起こしていきます。
ひたすら奇天烈な内容だと思っていると、不意打ちで、家族愛や師弟愛にしてやられます。
ここがポイント
まさしく「面白きことは良きことなり!」と思える作品です。
7、『恋文の技術』
京都の大学の研究室から遠く離れた実験所に飛ばされた、大学院生の男性がいろいろな人に手紙を書く話です。
主人公の大学院生の文通で送る手紙だけの内容で、物語は構成されています。
相手からの返信は描かれていませんが、大学院生の手紙の内容で、相手がどのようなことを書き送ってきたのかが、窺え知れます。
ここがポイント
多彩な表現や、想像を超える阿呆な出来事に笑いを誘われ、それでいて、キュンとさせられる場面も多々あります。
手紙の内容だけでこれだけ面白い作品が描ける、森見氏の筆力に圧倒されてしまう作品です。
8、『宵山万華鏡』
京都の祇園祭の宵山を舞台にした、まさに万華鏡のように変わる景色を描いた6編からなる連作短編集です。
ここがポイント
夢と現実、あの世とこの世の狭間の朧気ながらも、少し不気味な世界観を醸し出しています。
きつねやたぬきに化かされるような不思議なことがありながらも、普通に思える世界に引き込まれてしまいます。
夢を見ているような気分に浸れる作品です。
9、『ペンギン・ハイウェイ』
小学四年生のボクが住む郊外の町に、突然ペンギンが現れた話になります。
ある日突然、住宅街に出現したペンギンの群れ、何なのか、よちよち歩いたり、空を見上げたり、ペンギンたちはどこからやってきて、どこへ行くのだろうか。
小学四年生のアオヤマ君と、不思議な歯科医院のお姉さんを中心にしてストーリーは展開していきます。
ここがポイント
子供時代に経験したワクワク感を感じさせてくれる作品です。
10、『森見登美彦の京都ぐるぐる案内』
森見登美彦氏の深みが味わえる随筆2編を収録し、サカネユキ氏の叙情的な写真も競演した作品になります。
ここがポイント
今までの森見氏の作品に登場するあの場所や、この場所が紹介されていて、かなり楽しめます。
京都に行くときはこの本を傍らに、聖地めぐりをするのもいいのではないでしょうか。
京都の奥深さと、森見登美彦氏の魅力の両方が味わえる作品です。
11、『郵便少年』
「ペンギン・ハイウェイ」の番外編であり、まだ小学三年生だったアオヤマ君の話になります。
いろんなものに興味を持ち、難しいことに突き当たっても、アオヤマ君のあきらめないで解決策を見つけようとする姿がとても健気で可愛く描かれています。
ここがポイント
一生懸命で純粋なアオヤマ君の姿に本当にほっこりさせられます。
ほんわか優しい気持ちになれる作品です。
12、『聖なる怠け者の冒険』
京都の街に現れる義賊のような「ぽんぽこ仮面」の跡継ぎとして目をつけられた、社会人二年目の小和田君の話になります。
宵山を舞台に怠け者VS冒険を求める者たちの、熱い戦いが繰り広げれていくのです。
相変らず、京都は不思議な街として捉えられていて、変な人がたくさん出てくるし、森見ワールドが全開になります。
ここがポイント
また要所要所での台詞が何とも言えず、心に残ってしまいます。
少し落ち込んだ時に読めば、元気が貰える作品です。
13、『夜行』
十年前、京都、鞍馬の火祭りで突然、姿を消した仲間の長谷川さんに会いたいがために、鞍馬に集まる仲間の話になります。
旅行先の夜、学生時代の級友たちは、自分たちが出会った不思議なことを語っていくのです。
ここがポイント
暗い闇とそこはかとなく感じる、薄気味悪さがありますが、ホラーというよりも一種のパラレルワールドのような感じで、物語は展開していきます。
じんわりとした不思議な怖さが、味わえる作品です。
14、『太陽と乙女』
特別書き下ろしの全90編を網羅したエッセイ集になります。
書籍や新聞に掲載された文章をまとめたものであり、森見氏のことが少し分かったと思えるようなエッセイです。
ここがポイント
ペンネームの由来や作品の裏話、編集者との面白い話、カワイイ奥様のことも綴られています。
森見氏が見てきた世界が、堪能できる作品です。
15、『熱帯』
物語の中で新しい物語が始まり、またその新しい物語の中でさらに新しい物語が始まるというまさに、ロシアの民芸品のマトリョーシカ人形のような物語になります。
次々に変わっていく主人公、一気に変化していく世界、とても長い夢を見ているような感覚に陥ってしまいます。
ここがポイント
本を読むことの楽しさ、何かを得るためではなく、純粋に物語を楽しむという大切さが実感できます。
想像力と思考力をフル回転させられてしまう作品です。
まとめ
森見登美彦氏の作品のご紹介は、お楽しみいただけましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
今までとは違った感性が見つかるかもしれませんよ。